3月はじめ、義理イトコの優ちゃんが臨月を迎え、出産することになったんだ。
でも、あれだね。産婦人科って普通の病院とは違うよね。独特のオーラがあるよね。ある意味、幸せオーラというか。
例えば、壁紙から違ってくる。大病院のなかで産婦人科に突入すると、いきなり壁がピンクになったりする。ちょっと自分、場違いって思ったりする。
もうね、お花畑のピンクやら、可愛い動物の絵なんかあったり、青い空に白い曇って、ほんとメルヘンチックな世界。
これ、なぜ、産婦人科だけなんだろう。
病院のほとんどはモノクロの世界じゃない。
白い壁一辺倒。
でも、一般病棟のほうが可愛いさとか、幸せオーラとか、本当は必要じゃないのだろうか?
病院が白である理由は清潔さをアピールしているそうだけど、私は無機質で怖い。ああ、ここまで来てしまったという絶望感。
普通病棟といえば、体が弱り、気持ちも萎えて、最悪の気分の時に、高熱も付け加えての、もういやだ辛すぎるって場合に入院するところだから。どうしてもイメージがね。
で、唯一、健康体で行く病院が産婦人科。ここはとてもオメデタい場所なのだ。
病院といっても、ちょっと毛色が違うというか。
ディズニー風だしてる。
夢の国みたいな雰囲気で、ピンクの壁に、お花が咲いてたりしてる。
ともかく、大きなお腹を抱えた女性が、えっちらおっちら、ほっこりと歩いているあの場所ほど幸せオーラを醸し出している場所はないって。
でもな、ほんとは違う。いや、違う。違うから!
少子化で子どもを産む女性は減っていて、今、産婦人科病棟には、必然的に初産婦が多い。はじめての妊娠、はじめての出産。
みな不安を抱えている。
子どもを産むなんて簡単よって、はるか遠くに産んだ方は言うけど、なんてたって最後の出産から30年か40年か、もっとすぎてるから、みんな出産時の陣痛のイタさなんて忘れている。
かくゆう私も、陣痛の痛みで夫の首を掴んで締めあげたらしい。
まったく覚えてない。
産婦人科。そこには想像を絶する壮絶なドラマがあったりする。生の叫び声が飛び交う野戦場だったりする!
初々しい新婦が、可憐な女の子が、いざ陣痛がはじまり、出産となったとき。
もうね、ここぞとばかり豹変する!
例えば、
ももこ(id:konkatsu50)さんから「産婦人科で飛び降りてやる〜って騒いでた人居た…😱」というコメントを前々回にいただいた。
ももこさん、婚活に頑張る素敵な方だが、そんな過去を見て来たんだね。
でも、うんうん、わかる。その気持ちわかる。
私が子どもを産んだばかりの入院中、陣痛室から壁越しに聞いたのは・・・
冷静な男性医師が妊婦に優しく声をかけていた時だ。
「わかりますよ。大変ですね。わかります」って、痛みに吠えまくっていた妊婦をなだめた瞬間だった!
「うっせぇ! 男のあんたに、何がわかる!」
すげえ声で妊婦が叱りつけた。
もう一つ、印象に残っているのは、妊娠5ヶ月で出産のための勉強会に参加した時のことだ。
初産の人が多いためか、産婦人科病院では妊婦のために、こうした行事は多い。
もう忘れてしまったが出産時のイキミ方とかの練習をした。
ひっひっふ〜〜って、呼吸の練習なんかをした。
ま、あれだね。妊婦って幼稚園生だね。
先生のお遊戯に合わせて、いきみ方とか、呼吸法とか。
「いいですか、ひっひっふ〜〜っ。この呼吸です。さあ、お腹から息をだして、さあ、やってみましょう」
10人くらいのお腹の大きい人たち全員で、
「ひっひっふ〜〜っ」
「全員、お上手、そうそう。あら、アメさん、ちょっと違うわ。それは鼻息ですから。ちがいますよぉ。こうね、お腹から息をだした」
まさかのダメ出し。
「ふっふっふっ」
「息が小さい。そんなイキミ方じゃ、赤ちゃんはでてきません。
ひっひっふ〜〜っ」
「ふんふん、クッション!」
「アメさん!」
いや、カオスだ。
で、そのひとつの行事で産婦人科内を見学した日だ。
その日は実際の分娩室を見る予定だったが、あいにくと急な陣痛が始まった人がいて、中には入れなかった。
「産み月を迎え、陣痛室にはいっても冷静にね、大丈夫ですからね」と、助産婦さんが説明した瞬間、ニワトリが絞め殺されるようだ悲鳴がドア越しに聞こえた。
助産婦さん、それを聞いても顔色ひとつ変えず微笑みながら。
「もうすぐ赤ちゃんが産まれそうな方が真剣に頑張っていますね。今日は分娩室をお見せできないので残念ですが」と、助産婦さん。
「皆さん、外から応援しましょう。頑張ってる妊婦さんを応援しましょうね。さあ、皆さん、頑張ってと、皆さんが祈れば、中の妊婦さんにも届きます。さあ、みなさん」
これは、なにかの新興宗教かと思った瞬間だった。
中から怒鳴り声がした。
「お前が産め!」
産婦人科到着
首都高で思わぬロスをして、結局、30分くらいで着く距離を1時間以上、迷いに迷って、私は、なんとか優ちゃんがいる病院についた。
優ちゃんは大きな病院の産婦人科にいた。
高齢出産だから、病院を併設した産婦人科のほうが、いろいろと問題があったとき対処できるって、そんな過保護叔母の配慮だった。
オババが待っていた。
「やっと来たか」
「叔母さんは?」
「優ちゃんに追っ払われて、拗ねてる」
「太郎くんは」
「まだ、到着しない。予定日に帰るつもりだったが、出張中でな。明日には帰ると。コロナの影響で飛行機とか手配が難しいらしい」
まだ3月はじめの話です。
この夜も産婦人科は忙しいのだろうか。不思議と妊婦の陣痛は重なる。
月の関係か、助産婦さんが「満月や新月、天気が荒れると生まれることが多い」って言っていたが・・・、出産は重なることが多い。
それにしても、なぜ、出産は夜に多いのだろう。太古、敵から身を守るため夜に出産した名残が遺伝子に残っているのだろうか。
「で、どうして私が」
「ま、それは、優ちゃんだから」
というわけで、赤ちゃんが生まれそうなのに、産まないと閉じこもった優ちゃんの病室前に来たんだ。
・・・・・・・・・・・つづく
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最初からの話はこちらからになります。
妊婦さんへ。
出産は人によって違っています。大変な人もいれば、私のある友人のように、初産で病院について10分後には生まれたって簡単な人もいます。
こんなことを書いてますが、結局はうまくいきますから。
案ずるより産むが易し。
頑張ってくださいね。