【結婚と毒親】出産で女は何かを捨てる。しかし、優ちゃんほど捨てた女は他にいない。漫画「セブンティウイザン」
結婚と毒親
皆さま、優ちゃんのことお待ちのようで、いや、私は待ちたくないけど。
ご存知の方はご存知じの、私の義理イトコでトラブルメーカーの優ちゃん。
天然でピュアで妖精の優ちゃん。
いや、私だってね言いたくない。
けどね、「アメちゃ〜〜ん」とか、クァッ、かわいい甘い声が背後から聞こえると、大抵、それは甘くはない!
むしろ、ぞっとする。
最初に呼ばれたとき、優ちゃんは薬指にジュース缶のプルトップをつけて追っかけて来た。
つまり、夫のイトコで、姑であるオババの妹で、私からすれば義理叔母のひとり娘なんだけど。
背後から呼ばれると、十中八九しでかしてる。
想像の上を行くアホなことしてる。
そんな中でもプルトップ事件は私的には衝撃度において、1、2位を争う事態だった。なぜって、その頃はまだ優ちゃんが普通の大人だって思っていたからだ。
で、ほぼほぼ初対面に近い頃だ。背後から可愛いい声で追っかけてきて、ハアハア息を切らしながら、私に薬指を見せた。
私は混乱した。
プルトップを薬指にはめた、婚約者のイトコが追っかけきた。
ある意味、シュールだ!
で、どう対応してよいかわからなかったのだ。
深読みもした。
(私たちの婚約なんて、プルトップ並って嫌味か?)
「そ、それ、どういう意味でしょうか?」
「あのね、優ちゃんね」
彼女は屈託のないピュアな視線で私を見た。
「ジュース缶にプルトップってあるでしょ。指輪みたいだとおもって指につけたら、ぜんぜん取れなくなったの」
取れないって。
まだ、私は事態を読めなかった。
実際、見たままならプルトップが外れないって、そう見える。
だけど、幼稚園児じゃないから。
成人式をはるか前にすませた大人だから。
優ちゃんの真っ白な太めの指にって、あえて追加して書いておくと、優ちゃんは、何もしないから綺麗な指をしているんだ。
その薬指に、きっちり、ねじ込まれたプルトップ。
ま、まさか、マジ、外れないって、そういう意味か?
おいおいおいって、心のなかで悲鳴をあげた私。
大人になって指にプルトップつけてる奴はそうはいない。その上、取れなくなったと泣きついてくる女は、不肖アメリッシュ、過去に優ちゃんしか出会ったことはない。
そう、優ちゃんとは、そういう女だった。
ちょっと、歩けば転ぶし、
『ドジでおっちょこちょい』
そんな程度じゃ優ちゃんを表すには軽過ぎる表現だった。
性格は悪くない。
わりと可愛い。むしろ、素直でいい子。ともかく、夫に見捨てられた叔母が超過保護で溺愛した一人娘。と、言えば、その成長過程から性格を感じ取れる察しのいい方もいるであろう。
いやいやいや、それ、甘いから。
その想像の上いってるから・・・
幼いころから大人になるまで、転ぶのが危ないからと叔母が手を握って歩き、箸を使うと目を怪我するからと叔母が食べさせ、小学校まで叔母みずからの見守り保育。それこそ、優ちゃんは何もしないで育ってしまい、おかげで、見事になにもできない大人になった。
そんな優ちゃんが39歳で反抗期を迎え、自立して年下の太郎くんと結婚したのだ。
優ちゃんと付き合いたいなんて、オババと私からしたらなんていい男。これで厄介払い、じゃなかった、イトコに幸せがきたって。
めでたし、めでたし・・・
そ、それが、
ちが〜〜〜う!
ちがうんであります。
39歳が、まさかの結婚。そして40歳になって初出産することになった。
優ちゃん、あの結婚式から、無事、赤ちゃんを産むそうです。
しかし、高齢出産は難しい。なんてたって、高齢になるまで守りきった秘密の穴園は、そう簡単には開かない。若いときの柔軟性を失っている。
でね、先々月の話なんだけど。
まだ、コロナウィルスの緊急事態宣言が出される前、それに先駆けて、アメリッシュ家に緊急事態宣言が発布された。
アメ家、緊急事態宣言
あれは3月。まだ、肌寒い冬の気配が残っていた頃。
午後10時過ぎに、電話がなった。
私、ぞっとしたね。
夜の電話でいいことないから。一番ましなので無言電話くらいだから。
電話番号を確認してみた。で、ソッコウで取らないことにした。そうしたら、次にスマホがなった。で、電話番号を見て、再び無視することにした。
そうしたら、2階から声がした。
「オババが話したいそうだ」って。
夫よ、それは君の母親だ。
君が対処せよ!
と、トントントンと軽快な音をさせて子どもが下に降りてきた。
「オババちゃんが話したいってさ」
スマホを差し出してる。
お前は〜〜、家族総動員して何を伝えたい。
「オババさま、今日も良き日で」
「アメ! 集合じゃ」
「いやいやいや」
「緊急事態だ」
「いえ、そこはなんとか私を外して、穏便に、そちら様でなんとか」
「〇〇産婦人科病院、優ちゃんが大変なのだ」
「いや、それは・・・、また、何をしでかして」
「あんたを呼んでる」
「呼んでる?」
「あのな、子どもが生まれそうなんだが」
「それはおめでたいです」と、言って次の言葉で絶句した。
「それがな。いきなり産まないと」
「へ?」
だって、もう産み月のはず。産まないも何もない。
産むしかないのだ。
「そ、それで」
「産まないといって、産婦人科の病室に立てこもって、あんたを呼んでる」
え? えええええ?
優ちゃん、またプルトップ、指にはめてる?
・・・つづく
【結婚と毒親】過去のシリーズは、ここから始まっております。
ご興味があれば・・・
漫画「セブンティウイザン 」
タイム涼介原作
NHKで「70才、初めて産みますセブンティウイザン。」としてドラマ化もされました。
簡単にあらすじをご紹介すると、高齢出産のお話です。
65歳の夫と70歳の女性という老夫婦が妊娠という、ありえない設定で笑いをとってます。
漫画第1作目では、自宅に戻った夫に、妊娠を告げる妻。
夫はいよいよ妻の認知症がはじまったのかと疑うわけで、ドラマでは小日向さんと竹下さんがコンビで出演、NHKのお写真では、ほんわかした雰囲気で癒されます。
ともかく、70才だから、お医者様に診断してもらっても、
「脳梗塞ではありません、つわりです」って、いちいち会話がぶっとんでます。
ドラマのほうを見逃してしまい、NHKの再放映も待っています。
漫画は文句なしに面白かったです。