アメリッシュガーデン改

姑オババと私の物語をブログでつづり、ちいさなガーデンに・・・、な〜〜んて頑張ってます

カクヨムコンテストの祭典! 新作小説を公開中!

 

 

あけましておめでとうございます。

皆さま、お元気でしょうか?

 

ブログを更新できずにいましたら、画面に「この広告は90日以上、更新されていないブログに掲載します」という広告が貼られていました。

あやや、です。

 

それにしても時間が高速で過ぎている気がします。

 

さて、昨夜は、うっすらと雪がふりましたね。

 

 

 

この時期、12月から1月はわたしが小説を書いてるカクヨムでは、

 

『第9回カクヨムWeb小説コンテスト』

 

という大きな祭典が開催され、わたしも新作小説を公開しております。

 

それで、忙しく日々を過ごしております。

 

通称、カクヨムコンと呼ばれるコンテスト、今年は現在のところ、11,750作品が投稿されているようです。

ため息がでるほど多くの作品が混在しており、ここで目立つのは並大抵じゃありません。もし、あなたに、お時間がございましたら、わたしの作品をお読みいただければ、とても嬉しいです。

タイトルは「後宮の悪魔」です。

 

 

後宮の悪魔」

 

第1話 警視正獅子王朔vsシリアルキラー・森上莞

 

 

 冬夜は、闇の訪れが早い──


 西新宿の高層ビル街は山に囲まれた谷戸に似て、風を集めて渦を巻き、空気には都会の饐えた匂いがまじっている。

 

 コンクリートの雨に湿った匂いと……
 排気口からの異臭と……
 人の体臭に混じった香水と……

 

 そんな都会の夜を俺はこれまでも嫌いじゃなかった。

 

「前後左右から徐々に輪を縮めろ、“まるたい”に悟られるな!」
「機動班、確保にむけて網をはれ!」

 

 西新宿から高架橋をもぐれば新宿三丁目。夜の呼び込みたちが仕事帰りの会社員を快楽の地獄へと騒々しく誘いこんでいるはずだ。


 平凡な都会の日常。
 変わらない風景。
 その空気に存在してはいけない異物。

 

「“まるたい”、三丁目を避け、裏新宿に向かうもよう」
「網を縮めろ」
獅子王さん、今、どこですか?」

 

 直属部下である佐久間の声がイヤホン越しに響いた。

 

「どこかって、聞いてる場合かよ。抜かるな」
「了解!」

 

 俺は警視庁捜査一課に出向して四年目の警視正だ。キャリア官僚としては異例の長さで所轄に陣取っているには、二つの理由があるからだ。

 巷を騒がすシリアルキラーを追い詰めるには、タガが外れた獅子王朔しかいないという上の判断と、もう一つは失敗したときの全責任を俺に押し付けたいという官僚的皮算用からだ。

 おい、ここは苦笑する場面じゃないぞ。
 震撼すべきところなんだが。
 まあ、後になって考えれば、この時、俺は自分を過信しすぎた。お花畑であったことは否定できない。

 

 シリアルキラー森上莞《しんじょう・かん》は、残虐な犯罪をくり返す男とは思えない、可憐な少女みたいな顔をした童顔の男だった。

 事件番号『令和2(*)330』、事件名称『東京広域連続殺人事件』は、ちまたでは通称『ピンキーフィンガー事件』として知られている。
 マスコミやSNSを大いに騒がせた事件で、世間的に注目度が高い。

 

 奴の逮捕が難航したのは、犯行に及び自分の手を極力汚さず他人を操るからだ。
 最終手段として俺は奴を挑発するためにSNSサイトを公開した。

 

「アホな子どもぽい性格の」からはじまる五千文字に及ぶ挑発文。奴の心理分析を公開したことに反応があった。

 

「それほど、僕について詳しいなんて、愛しているよ。あんたを愛している」

 

 森上莞は、全能感に酔いしれた狂人であることに間違いはないだろう。

 

「あんたを愛している」

 

 それが奴の墓穴をほった。
 奴を追い詰めたサイバー班を俺は誇りに思う。

 

「奴は?」
「非常階段を登った、あの駐車場ビルだ」

 

 森上莞は高架下をくぐらず低層ビルの多い裏新宿に向かった。目的は三階建ての古びた駐車場だった。

 

獅子王さん、こっちです。ここから階段を使って上に」と、部下の佐久間が囁いた。
「よし、周囲を固めろ」

 

 北風が吹く寒い夜で鼻水が止まらなかった。
 捜査員を配置し、俺は真正面から奴を追った。

 スチール製の安っぽい階段から奴の靴音が響いてくる。その足音は一定で落ちついている。

 

 駐車場の三階でドアを開ける音がした。
 三階建ての駐車場は車のスロープと、二か所の階段があるほか逃げ道はない。その全ての逃げ道をふさぎ奴に迫った。

(今だ!)

 三階のドアを開け放った瞬間、ふりかえった奴と目が合った。考えていたより背が低い。色白の女みたいな顔は冷静で、驚きも恐怖も見せない。

 

「確保!」

 

 叫ぶと同時に、奴は屋上に登る螺旋階段に向かった。

 カンカンカンカン。
 奴の足音が響く。

 

「ライト!」

 

 地上から駐車場を照らすなか、屋上まで奴は逃げた。その先はない。

 駐車場の周囲は捜査員が取り囲んでいる。興奮が全身を駆け回る。
 全員が固唾を飲んで俺の指示を待っている。

 奴も、捜査員たちも、そして、俺さえも。

 螺旋階段先のドアに耳をつけた。

 静かだった。

 俺は金属ノブに手をかけ、ぐるりと回した。仲間に合図を送り屋上のドアを開ける。
 冷たい夜の風が吹き込んできた。

 

 屋上へ飛び出した瞬間!

 

 細いナイフが腹に突き刺さった。俺は、しまったと思うより、誰かカバーに入れととっさに思った。

 ズブリとわき腹に刃が突き刺さり、ピリピリとしたイヤな感触がする。
 あの決定的な瞬間……
 それほど痛みを感じなかったのは、神経系を刺激する肉体の箇所を運良く刃が避けたと、冷静に判断したはずだ。

 

 森上莞は俺の腹にナイフを突き立てると、次の動きは早かった。金属ドアの横のフェンスに俺を押さえ、そのまま飛び降りたのだ。

 ナイフに気を取られ抵抗できなかった。俺は奴と一緒に地面に叩きつけられた。
 いや、違う。
 俺は落下の衝撃を避けるクッションとして使われたのだ。
 この俺が、天下の獅子王朔が。

 

 落下する、わずか三秒ほどだが、しかし……。
 脇腹を刺され、屋上から落ちた三秒は意外と長かった。

 

 刃がアスファルトにあたり、カキンと金属的な音がすると同時に、グギャっといういやな音が体内に響いた。
 奴は俺に被さったままダイビングして、傷ついた足を引きずりながら立ち上がった。

 

 ──確保しろ!

 

 必死に叫んだが声にならなかった。ただ、ゲホゲホッと大量の血を吐いた。
 体内にアドレナリンが駆け巡っているのか、状況に驚愕したのか、まだ痛みを感じなかった。
 ビルを取り囲んで配備した部下が奴のあとを追う。
 そこで信じられないことが起きた。
 奴が、こちらを見てニヤリと笑ったのだ。その瞬間、光の玉が発光して、まぶしくて目を開けられないほど輝いた。

 

 佐久間が俺に向かって叫ぶ声が最後の記憶になった。

 

獅子王さん!」

 

 屋上の手すりから叫ぶ佐久間和哉の顔がぼやけていく。
 これで死ぬのか……。

 

 


 ……俺は死んだ。

 思考がバラバラに拡散して、脳が欠片になって飛び散る感覚がする。
 死とは緩慢なものなのだろう。

 ぼぅ〜と……。
 ぼぅ〜として……。

 薄目を開けると、赤い下地に黒い龍を金で縁取りした煌《きら》びやかな天井が見えた。


 もう一度、目を閉じて開いた。
 見えているものは間違いないが、刑事を長くやっていると理解できることがある。
 実際に見えるものが事実とは限らない。

 赤い下地に黒い龍の天井絵。
 夢か。
 いや、そう結論づけるには質感が現実的だった。

 

 何かがまずいようだ。どうまずいか理解できないが、まずい。
 脇腹の痛みは消えている。ということは、だいぶ時間が経過したということだ。どれだけ意識を失っていたのか。

 

 目だけをキョロキョロさせ周囲を観察した。すぐ隣に人の気配がした。

 

「お目覚めでございましょうか、お姫さま」

 

 女性の深く落ち着いた声が聞こえた。

 

第2話 ここはどこだ?

 

 ベッドから起きあがろうとしたが、身体が思うように動かない。
 ベッドが硬すぎるからか……。
 右手をシーツに這わせた。

 

 んん?

 

 ツルツルした質感で端に届かなかった。この材質はシルクだろう。

 俺のベッドはシングルサイズで、まっすぐに寝ると足が飛び出し、以前から狭く感じていた。
 身長一八七センチ、体重七十六キロ、体脂肪率十パーセント。
 腹筋は見事に割れている。いや、誤解はするな、俺は頭脳派だ。けっして肉体派ではない。

 その俺が横になったベッドが驚いたことに広い。試しに両手を広げても端にも届かない。
 どうなっている。
 頭を振ると、ズキっと傷んだ。右側頭部が特にひどい痛みだ。手でふれると包帯が巻いてある。

 思い出してきたぞ。
 あのシリアルキラーを追い詰めたとき、俺はビルの屋上から落ちるという下手《ヘタ》を打った。

 まあ、所轄でカツを入れるために先頭にたった結果でもあるが、頭脳明晰で理論ずくの俺は煙たい存在なのは理解している。

 ああ、また、ぼうっとして記憶が曖昧になる。
 俺の、俺の名前を、名前はなんだった。

 そうだ、ししおう……だ。

 俺の名前は獅子王朔。

 

「姫さま」という声が再び聞こえた。

 

 警視庁捜査一課から警察署に配属された警視正は、どれほど天地がひっくり返っても『姫』などと呼ばれない。

 ジョークにしても、俺をそう呼ぶ部下はいない。
 今後の出世を棒に振って、生涯を地下で書類整理するつもりなら話は別だが。声をかけた女は、なかなかに根性がすわっているのか、あるいは、単なるアホなのか。

 

「姫さま、お加減は?」

 

 俺は、ゆっくりと威嚇するように身体の向きを変える。

 

「なりませぬ、姫さま。まだ、お傷が治っておりません。どうぞ、お休みくださいませ」と、品は良いが断定口調で女が言っている。

 

 言葉の最後、毎回、確認するようにウンウンとうなずく。
 この女の癖だろう。おそらく言葉に出してから、それが妥当かどうか、無意識に確認しているのだ。
 性格分析をすれば、生真面目に職務を全うするタイプだ。看護師としては向いている性格だ。

 しかし、看護師なのか?

 

 すべてが異様だ。

 

 女の髪は、びんづけ油できっちりと後ろにまとめられ、服装は……、これは襦裙《じゅくん》ではないか。歴史上では中華系の女官が身につけていたものだ。色はグレイで使用人にはちがいない。

 しかし、姫だと?

 

 警察大学校の時代から、俺は骨の髄まで警官として、自らを律してきた。
『自らを律し、自らを修める』と叩き込まれてきたのだ。

 

 しかし、姫だと?

 いや、まずは冷静に初動捜査の基本からだ。一に観察、二に観察、三も四も観察からだ。

 ゆっくりと周囲を見渡した。
 質素な部屋ではない。むしろ金がかかっている。

 見える範囲に四人の人間。女三人、若いのが二人と、先ほどから無礼にも俺を姫と呼ぶ年配が一人、そして、男は一人。男は白いエプロンのようなもので前後をおおって、ヒモを腰でゆわえた姿だ。

 

 年配の女以外は、みな頭を下げ床をこれでもかと見つめている。

 逃亡するなら、最初に年嵩の女を人質にして、男の首に手刀を入れる。動線を確保するためには、ふいをついて右に飛び出すほうがいいだろう。

 

 まず目の前の女からだ。

 女は四十代ってところか。
 髪に白いものが混じっている。これは年齢からではなく、おそらく神経症的なもの。気苦労が絶えないための白髪か。目線はあきらかに俺を気遣っている。悪意はないようだ。

 

「姫さま、どうか、お休みくださいませ。お身体に触ります」
「姫とは誰だ」

 

 怒鳴った瞬間、その声に自分が一番驚いた。声が裏返ったのか、奇妙に細く高い。

 年嵩の女が目を見開き、それから背後の男に問いかけるように振り返った。

 

「畏れながら、姫君さまは頭をお打ちになりました。それゆえに混乱なされているのやもしれません」
「脈をみよ」
「かしこまりました」

 

 男が目を伏せたまま、うやうやしく膝でにじり寄ってくる。そして、顔をあげ、俺の手首に布を当て脈を取ろうとした。

 

「ダメだ。我慢がならない。なにしやがる。こんにゃろうが!」

 

『自らを律し、自らを修める』態度ではなかったが、怒鳴るしかなかった。

 我慢の限界値をこえ、つい怒鳴った!

 しかし、耳に届く声が余りにかわいすぎて、実に滑稽で怒鳴った自分でさえ、これは違うと思ったほどだ。

 

 捜査上の経緯から、被疑者との対面で録音することが多い。
 録音を確認する時、自分の声に違和感を覚えるのは普通のことだ。
 理由はわかっている。人間はその身体の構造上、声帯の振動を通した『骨導音』で自分の声を聞いているからだ。

 

 しかし、いくら骨を振動させたとしても、女の声にはならない。それも、むちゃくちゃ可愛い声で、高く細く幼い。

 その上、男が平伏しながら取ろうとした、その手首の華奢なこと。折れそうなほど細い。

 こ、これが自分の手首か?
 時間があれば、スポーツジムで鍛えに鍛え抜いた、これが自分の腕か?

 ま、まさか違うだろう。いや、冷静になれ、自分。
 これは、この手首は俺じゃないが、……しかし、あるいは、もしかして……、俺かもしれない。

 

 医官が左手首に触れ、妙に柔らかい指の感触に、げっとなったからだ。

 まちがいない。この医官の指を感じている。

 視界に入るのは、俺自慢の鍛え上げたごつい手首ではなく、薄白い袖から出るいかにも弱そうな筋肉のかけらもない、ポヤポヤの白い手首。

 

 ど、どうなっている。

 男の手を払いのけて叫んだ。

 

「鏡だ、鏡をよこせ!」
「お、お姫さま、どうぞ、どうぞ、お心をお静めくださいませ」
「鏡だ!」

 

 俺は飛び起きると、そのまま周囲の者を蹴散らして、部屋にある鏡前に陣取った。どうも着物の前がはだけたようだ。
 全員が、その場で平伏し、俺を見ないようにしている。

 少しガラスが歪んでいるような、不透明な鏡があった。
 何もかもが異様だが、一番異様なのは、鏡にうつる俺の顔だ。

 

「姫さま」
「姫さま、どうぞ、お静まりを」
「姫さま」

 

 驚くにも、いろんなバリエーションがある。この時の俺の気持ちは天地がひっくり返ったなんて、生やさしいものではなかった
 びっくり仰天、驚愕、たまげた。

 

 入省して警察大学校で訓練を受けたとき、この感情を持つことを一番に禁止したのは自分のはずだったが。

 

 俺の顔が……。
 お、おんな、女、オ・ン・ナ!
 女の顔が鏡にうつっている。

 

 それも、かわいい……。

 

 

😀 😀 😀 😀 😀 😀

 

ちょっとでも面白い、読んでみたいと思われた方へ、

この続きは第3話「男に抱かれる存在」です。続きは下記からお読みいただけますと、泣いて喜びます。

 

読者選考で第一次を突破するには、多くの方に読んでいただき、星をいただく必要があって。本当にすみません。

 

kakuyomu.jp

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