【毒親と結婚と離婚5】アニメ映画『この世界の片隅に』NHK総合で8月3日に放映。世界情勢と関係ない所で、日常は常に小さな問題にあふれている
《オババ》私の姑、人類最強のディズニーオタク。妹の夫とは同級生
《叔母・勝江(仮名)》オババの妹、ヒステリー性障害を患う。離婚を条件に自宅の譲渡書をもらうが離婚は拒否している
《叔母の夫・あの男》叔母とは10年来の別居中。米国に本拠地を置く会社CEOだが破産、日本で病気療養中
オババと叔母、姉妹の張り合い
『人は変わることはできないけど、成長することはできる』
誰かの言葉で、それが誰か思い出せないです。
人は変わることができないって、確かだ。そうだって言い切ってもいい。
我が家の『日常』ですが・・・
うちの夫は電気を消さない。それはもう、夫が出没した場所、すべてに電気がついている。それさえ辿っていけば、夫に行きつくってくらい、つけきっている。
まず、帰ってくると、玄関からトイレ、そして洗面所、そこで横道に逸れて、なぜか必要もないのにクローゼットに向かい、階段を上がってパソコンの元へと、その行き先々7箇所の、すべてに照明が煌々とついてます。
電気代! ってな感覚がないから、絶対、変われない。
そこ、もう10年以上も前に諦めました。
そして、電気を消しながら歩く私も変われないんであります。
てな、具合に人は変われないんで。
夫の電気グセと、私の消灯グセ。
で、最初の言葉。
誰かが言った。
『人は変わることはできないけど、成長することはできる』
成長することはできるってのも、正しい。
大いに同意する。なにせ、私、電気を消すの、すごく鼻が、じゃない、目がきく、一瞬のうちに消す腕は格段にあがった!
が、こういう格言? これ年齢制限ってあるよね。
成長できなくなる年齢ってあるよね。
例えば、今、アメリッシュ親族関連では叔母。
さすがに、70歳過ぎた女性に成長はない。
だから、思考がどんなに無限ループしても、成長できないんであります。
離婚しない。家は欲しい。
この2つの間を行ったり来たりして、時間だけが無駄に過ぎてます。
で、オババ、作戦変更したようです。
話しながら、叔母への興味を失い、表情にすっとカーテンがおりてました。
説得しようって顔じゃない、投げやりになってる。
で、オババがたてた作戦、これまた、とんでもなくって。
叔母がトイレに立ったときを見計らって、こう言ったんであります。
「アメリッシュよ」
「は!」
「5000万円の税金を、そっちで払う度胸はあるか」
「め、滅相もございません」
「この状況では、そうなる可能性がある。あの男が勝江に自宅を譲った証書を受理されなければ、今度は破産宣告で、この家は取られる。税金を払うか、家を取られるか、離婚して相続するか、3つの方法しかない」
「はぁ」
「勝江が離婚しないとなれば、家を残す方法は税金。そっちは払えるか」
え〜お、ええおお、わかっていることなぜ聞く。
5000万円って。
瞬殺で、払えん。
「え〜〜と、あの、主人と相談しませんと」
とりあえず出しときました。
主婦最終兵器、
主人と相談、投入!
これこそが主婦としての最大の武器、あらゆるところに使い回しが効く使いかっての良さったら、もう、万能兵器なみ。
「それは、もしかして、私の息子のことではないか」
げ!
まずい、また忘れとった。
こいつにだけは、通用せん武器だった。
「いえ、あの、主人は別にいて」
「ほお? いつ、夫を変えた」
「いや、あの、いつのまにかスヌーピーが家の照明を付けっ放していて」
トイレから水を流す音が聞こえてきました。
「いかん、年寄りのくせに、トイレが早い。指示を聞け。でないと、息子から5000万円、搾り取るぞ」
「どこ探しても、そのような金は」
「ローンじゃ」
「ご、御無体な」
「いいか、あの、後生大事にしてる、勝江の書類を盗め!」
「へ?」
「離婚届と両方、盗め!」
「そ、そんなことをしたら、たとえ親族といえども」
いかに親族といえども、重要書類を勝手に持ち出すことは法的にも問題があります。訴えられたら、負けます。
「アメリッシュ」
「は!」
「刑務所と5000万円、どっちを選ぶ!」
日々、家の電気を消してまわる、どケチに聞く?
私に、それ聞く?
「刑務所です」
「さすがじゃ」
叔母、トイレから戻ってきました。
ブツは目の前にあります。
「ところで、勝江、その書類が入ったA4の茶封筒、もう1枚ないかな?」
「これですか」
叔母、動きません。そこで、オババ、姉妹間の競争を煽(あお)るように言いました。
「ふん、どうせ、あんたのことだ。そうそう用意なんかないじゃろう」
「馬鹿にしないで。茶封筒なんて掃いてすてるほどあります」
「では、1枚、もらえる?」
「なんに使うんですか?」
叔母も疑い深い。
姉妹間の長い戦いの歴史をかいまみるような攻防戦。
「この雑誌、借りたいんだが、入れてく袋がない」と、オババ、テーブルでくちゃくちゃになった薄い冊子を指差しました。
いかにも退屈そうな『健康』とか書いてある冊子です。
ディズニー関連以外の雑誌など興味のあるオババではありません。
「貸してもらっていい?」
「いいわよ」
叔母、よっこらしょって立ち上がると、古いタンスをギシギシいわせながら、茶封筒をとってきました。
「さすが、勝江、細かいことはよくできます」
オババ、こちらを見て、『健康』雑誌を入れ、それから茶封筒を手渡してきました。もう〜〜〜、どうするっちゃよ。
あの、目の前の重要書類の茶封筒と差し替えろって、そういうことよね。
「勝江、トレイはいいのか?」ってオババ。
先ほど、叔母さん、トイレから帰ってきたばかりです。
計画がズサンちゅうか、もっと良い方法、考えられんのかい。
「さっき行ったばかりよ」
「いや、年をとるとトイレが近いはずだが」
「だから、行きました」
「いや、だから、私が行きたい」
「場所、わかってるでしょ」
「おんや、どこでしたっけ」と立ち上がると、叔母を見てます。
「ボケたんですか」
「トイレ!」
仕方なく叔母も立ち上がってトイレに向かいました。
私・・・。冊子と書類の茶封筒をとっさに交換しました。
「アメリッシュ」
トイレ方向から声がします。
「なんでしょうか?」
「もう帰れるか」
「帰れます」
おおお・・・、どうするよ。胸に抱えた書類が重い!
to be continued
アニメ劇場用映画『この世界の片隅に』
キネマ旬報ベストテン第1位になった、この映画。
『となりのトトロ』以来、28年ぶりの快挙でした。
アニメの内容は、ドラマ化もされて有名でしょうから、特に書きませんが。
ただ、すずさんの日常は、その先に広島の原爆があるって、私たちは知っているだけに、切なく、そして、心をうちます。
当時の女性の地位の低さ、嫁としての地位の低さ、それでも淡々と日々を過ごす、天然すずさんの健気な姿に静かに泣けます。
8月3日NHKで地上波初登場。必見です!