《オババ》私の姑、人類最強のディズニーオタク。妹の夫とは同級生
《叔母・勝江(仮名)》オババの妹、ヒステリー性障害を患う。離婚を条件に自宅の譲渡書をもらうが離婚は拒否している
《叔母の夫・あの男》叔母とは10年来の別居中。米国に本拠地を置く会社CEOだが破産、日本で病気療養中
『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』
暑い! ものすごく暑い!
こういう時は暑苦しい映画でさらに熱く燃えるしかない!
ワイルド・スピード、いつの間にかシリーズ化してた。
第1弾は2001年公開。
それから、ほぼ2年おきに更新してくるなんて、几帳面すぎっ!
真面目サラリーマンか!
でもね、第1話が公開されてから18年過ぎてても、まだ、え? ってなるんです。
だって、シリーズ最初なんて、地方のスピードキチ映画で、とても中心はるような映画じゃなかった。端っこのB級映画。それがスターウォーズばりにシリーズ化してのし上がってる。
驚きです。
猛スピードとアクションでジェットコースターに乗ったみたく走りまわる、
どっちかいやあ車が主役の映画。
もう映画ちゅうより、レーサー感覚。
特にIMAX/3D映画館でみた日にゃあ、
けっこうな確率で車酔いしてる。
けど、今回のワイスピ、権利元との関係で、どうも日本では、2Dでしか上映できないようだけど・・・。
それは興行的には、どう影響するんだろうか。
ところで、ワイスピ(ワイルド・スピード略)は日本とも関係が深く、X3は東京が舞台だった。
シリーズごとに南米、欧州、中東、ロシアを走りまわっており、
ご当地巡業の水戸黄門世界版であって、ロードムービーの体裁もあって。
各国でファンを増やしている。あざとい手法、功を奏してます。
で、
シリーズ累計興行収入、5000億円を突破!
ご当地従業、あなどれん。
今回はロンドン疾走。
きっと、文句なしに面白いんだろうな。
そして、翌日には完全に内容忘れてるな。
だから、毎回、見るたびに初見であって、ここも重要なんか?
もう一つは、ゴリゴリのアクション映画のくせに、仲間が家族として固い絆で結ばれ、大切にしています。
筋肉バリバリの大男たちといい、G1プロレスの世界観も併せ持ってます。
この家族として大切にってキーワードで、今、私は国道で車をギンギンに走らせてる。
私的ワイルドスピード。
時速48キロの猛スピード!
もうハンドルに、かじりついてるから。
なにせ、叔母の家から離婚届と書類、盗んじまったわけで。
背中に油汗、浮んでいるはず。
外は暗かった。
国道も帰りの車やバスで結構、混んでる。
正面から走ってくるヘッドライトの光を浴びるたびに、少し視線をそらして、真正面から、光を受けるのを避けてます。
これ、『男と女』という小説でレーサーの男がしてて、運転ってそうするんだって、学んだ私です。
で、深夜じゃないけど、多分、午後7時過ぎたくらいだけど、暗いから。
もう、泥棒的には時間帯ぴったりであって。
「で、ボス、こっから、どうすんで」
「しばし、待て!」
オババ、老眼鏡をかけ、目を眇めてスマホの番号を押してます。
泥棒にしては、なんか頼りないっちゅうか。
老境に達しすぎっちゅうか。
「もしもし、私です。・・・そうよ、委員長です」
委員長ってとこで、オババ、ちょっとだけ言い淀んだ。
でもって、オババを委員長って呼ぶのは叔父だけで、だから今、携帯から叔父さんにかけてるんだって、ハンドル握りながら思った。
「話したいことがあるんです。至急です。病院は退院したでしょ・・・。そう退院したの。状態はどう・・・、いいんですね。いえ、感謝しなくてもいいですよ、毛色が悪いったら、あなたに、お礼なんて言われた日には寝覚めが悪いです」
で、オババ、ぷっと吹き出した。
きっと、なんか叔父が洒落たジョークを言ったんだろう。やはり、叔父は魅力的な男です。
「今から行きますから、頼みがあります、ええそう、で、どこに・・、わかりました」
オババ、スマホを閉じました。
「アメリッシュ。これからアマン東京ホテルに向かう」
「あ、アマン東京って」
「ホテルだ、あのかっこつけ贅沢男、破産しても治らんようじゃ」
「首都高は走りませんから」
「高速の下でいいですよ。私もあなたの高速運転はこりごりですから」
私、いったん車を路肩に止めて『アマン東京』ってナビに入れました。
場所は、東京駅方面へ走って、皇居の近くって、
え? ここ運転すんの?
できんのか、私?
でもって、頑張った。
道幅、広いしで、なんとか目的地まで運転しました。
皇居前は高層ビルが立ち並び、国道も道幅が広いです。
永大通りに向かって右折して、次の交差点をすぎるとナビが、
『目的地周辺です。交通規制に・・・』って、決まり文句を吐いて、いつものように、私を見捨てた!
「お義母さん。どこですか?」
「左のはずだ」
てか、歩いてるわけじゃないから、車、すぐ通り過ぎっから。
で、えっ、左?
三車線ある道路の、なぜか一番右走ってるから。
だって、右折したから、そのまんま右側車線にいて、車線変更したいけど、車いっぱいだし。
「左、まずい!」
「そうだ、アメ。非常にまずい状況だ」
「わかっとります」
「高速じゃなくても、ダメなのか」
「別に国道だからって、急に運転がうまくなるわけじゃないです。うおーーー」
「ウィンカー!」
「へ!」
「出てない、ウィンカー」
ときどき、思うんであります。
世の中の人々は、真の危険に対して、あまりに無防備すぎると。
これだけは常識として伝えておきたい。
アメリッシュの運転する車の右、および、左を運転するでない!
とくに自転車。
勝手気ままに、道路を横切るだろう。
普通は車が避けるって、思い込んでおろう。
よく覚えておくが良い。
すべての運転手が一級だと思うことは、君たちの危機管理において、非常なる課題である。
君らは、今、そこにある危機をあまりに軽視している。
私がウィンカーを出したら、即座に逃げるように。
それしか、君らを危険から守る方法を、あいにくと私は知らない。
わかったか!
今、左を悠々と走る、ベンツ、お前もだ。
で、なんとかホテルのエントランスに到着して、むっちゃ後悔した。
だってな、ホテルのドアマン、ものすごく高級そうな制服を身に纏って、にっこり微笑んできたんであります。
なんとなく、(道に、お迷いですか? なんなら目的地、アマン東京ホテルマンのプライドをもって、行き先をお教えいたしますが)
って、そんな心の声が聞こえた。
間違ってもホテルの客だと思ってない、きっと。
あ、無理。ここ、私、場違い!
とくに、この格好じゃ場違いだから。
「お義母さん、ほんと、ここで降りるんですか」
「恐れるな、アメリッシュ」
てか、私、豪華でシックなエントランスに圧倒されてて、で、そのままブレーキ踏まずに、回廊をくるっと回って、ワイルドスピードで、速攻、外に出ちまった。
「アメリッシュ。何をしてる。駐車せんか」
「だ、だって、お義母さん、今日の服装、こういうホテルでは、ものすごく浮きそうですが」
「アホ、誰も見とらん。あんなに苦労してエントランスに入ったのに、また繰り返すんか」
みんな見てるって。
で、もう1回、皇居前を走って、今度は割と楽に、エントランスに入っちまった。
頼む、さっきのドアマン、交代しててくれ、もう1度くるなんてアホすぎるからって、祈りながら、再度トライ!
あ〜〜〜、おんなじ人やあ。
南無三!
で、私、東京に進出した、例のアマン、超高級ラグジュアリホテルのエントランスで、もう5週間は洗車してない、薄汚れた愛車を停車したんであります。
場違い感、半端ない。
叔父。むちゃくちゃだ。
これ、嫌がらせか!
to be continued