【毒親から結婚の道17】映画『探偵はBARにいる』って、ヒルトン東京お台場ホテルのBARで、探偵の、お仕事です。
《オババ》私の姑、人類最強のディズニーオタク。妹の夫とは同級生
《叔母・勝江(仮名)》オババの妹、ヒステリー性障害を患う。娘を溺愛し結婚に反対
《叔母の夫》米国に本拠地を置く会社CEO。自宅も会社も電話がつながらず所在不明
ヒルトン東京お台場ホテル
なんかね。このオババと叔母と叔父との二等辺三角形が会うことになりまして、場所はヒルトン東京お台場ホテル。
新橋から『ゆりかもめ』に乗車して、台場駅で下車すれば、すぐ左側にあるんです。ロケーション的には、とても便利です。
16日の日曜日は晴天であり、気温も急上昇してました。
夏がカンカンとか鐘叩いてるみたいに暑くて、海風が吹きますが、それでも暑かった。
オババの用意した黒ずくめの忍者スタイル、あるいは、芸能人お忍びスタイルは、即刻却下しました。
で、私、サングラスとマスクだけして、オババたちがホテルのレストランに入って行くのをロビーで見守りました。
オババ、スマホをオンにしたまま、私に聞こえるようにしています。
「帰ったら、つけて、居場所をみつけよ」と、オババの指示。
探偵かい。
であるならば、探偵はBARにいるわけで。
映画『探偵はBARにいる』という映画、ご覧になりましたか?
ハードボイルドで、少しチャンドラー要素があって。
大泉洋さん、フィリップ・マーロウの味わい出してたって、ちょっちハンフリー・ボガード(マーロウ演じた名優)意識してたって、そう思うの私だけ?
頼りなさげで、やる気のない男が、いざっていうと体を張って守ってくれる。
体はるしか脳がないけど、必死で守ってくれるって、そういう男、女性、キュンってします。
ま、それでヒルトンお台場のバーで、ちょっち待とうかなんて、カッコつけたわけです。
ホテルにはメインバー『キャプテンズバー』があります。フルーツカクテル、美味しいそうですが、ここで問題発生。
待ち合わせ時間は午後3時で、バーが開いてない。
探偵、BARに行けねぇ〜〜!
仕方なく、ロビーでこそこそしてましたよ。
ときどき、スマホに耳を傾けると、こんな会話が聞こえました。
「僕の印鑑が必要だったのかな」
「電話番号が米国では、ダメですからね」と、オババの声が聞こえます。
戦ってます。
米国の番号がダメなわけがないです。
突っ込まれないかと思いましたが、静かです。
しばらくして、オババから連絡がありました。
「アメリッシュ! 聞こえる?」
「は!」
「今から、ターゲットAがカフェを出る」
「ターゲットA?」
叔父のこと言ってるんでしょうが、思わず聞き返しました。
「つけよ」
「は! しかし、そのターゲットA。まだ、ロビーに現れませんけど」
「待て待て、おっと、トイレに入った」
オババたちは、2階にある『グリロジー バー&グリル』のテラス席で会っています。
「それにしても、早く終わりましたね」
「印鑑をもらっただけでな。あの男、忙しいとか言うて、すぐ席を立った」
「離婚届は?」
「勝江が握りしめとるよ。ぜったい提出するつもりはないようだ・・・、あ、トイレから出てきた。おっ! こっちに手を振っとる。なんでわかった」
わかるっしょ、普通。
「エスカレーターを使って降りてくぞ、怠惰なやつだ。階段を歩かんか・・・。よし、ターゲットA、ロビーに降りた」
「ターゲットA確認! つけます」
「いいか、決して悟られるな」
「ラジャー」
叔父は大股で歩いてくると、ロビーから外へ出ました。
小走りに後をつけました。
ドアマンが会釈してきます。
アカン、私を見ては、アカンのだ、ドアマン。
ホテルから出ると、左に歩くしか道はありませんから、適当な距離をとって追いました。
叔父は周囲に関心がないのか、しっかりとした意思を持って、どんどん先に行きます。
3メートルくらい距離をおいて背後を追います。
で、気づいたんです。
ゆりかもめのプラットフォーム。
見事なくらい、周囲に遮蔽物ないって、すぐ見つかるって。
叔父、エスカレーターから降りたんですが、まっすぐに行かず、逆にって、つまりこっちを向くわけで。
私、思わず、エスカレーターにしゃがみながら、動く階段を後ろへ後ろへと下がって、
同じ場所に居続けるという、非常事態。
「ちょっと」って、後ろから来た若い子に言わちまいました。
「あ、お腹が」ってしゃがんで、そのまま、しゃがんだままエスカレーター降りるところまで、乗ることになって。
しゃがんだままの私を、背後から来た女子、むちゃ気持ち悪そうに見てた。
「どこへ行った」ってオババからの連絡。
ええい、スマホに答えながら追撃って、もっと無理!
私、スマホの電源を切って、そっとエスカレーターの端から首を伸ばした。
叔父、新橋方面ではなく、豊洲方面側のドアで待っていました。
ちょっと意外です。どこへ行くのか検討もつかない。
普通なら新橋方面へ向かい東京へ戻る人が多いのです。
豊洲方面は空いてます。
アナウンスがあり、しばらくすると、ゆりかもめが到着しました。
叔父が乗るのを確認して、隣の車両に乗車。
連結部分の窓から、叔父の車両をみると座席に座っていました。
丁寧に整えられた白髪頭なので、すぐわかります。
何駅かすぎて、叔父、有明駅というアナウンスに立ち上がると、
ドアに向かった。
有明駅で降りたのは数人でした。時間的には、まだ午後4時過ぎで降りる人も乗る人も少ないようです。
なんとか、数メートル離れて追いかけます。
叔父、結構、背が高いので追いやすいです。
東口を出て、右に折れ歩道を歩いてます。
もしかして、この辺りのマンションでも借りているのでしょうか?
てか、自分で自分の実況してるって気づいて、私、まるでアナウンサー古舘であります。
叔父と言えば、公園のような広い歩道に向かって、ゆったりと左に曲がり歩いていきます。
叔父、立ち止まりました。
それから、手をかざして空 を見上げます。
なにを考えているのだろう?
太陽がギラギラして暑い日です。
と、叔父、なぜか、ふらふら体をゆらして、振り返るようなそぶりを見せました。
え? 気づかれた?
ま、まずい、隠れるとこは・・・
次の瞬間、叔父の体が、ふいに視界から消えました。
to be continued
『探偵はBARにいる』とドラマ『ノーサイド・ゲーム』
東直己氏のシリーズ『ススキノ探偵シリーズ』が原作。
大泉洋さんがいい味だして、松田龍平とのコンビも絶好調。シリーズとして3作まであります。
大泉洋さんといえば、ドラマ『ノーサイド・ゲーム』でも存在感抜群で、今季ドラマでは、私的には1番の推し。
池井戸潤氏、書き下ろしの最新作でラクビーチーム再建と社内の下克上に挑む内容であり、人間関係の粋(すい)、ラクビーファンじゃなくても熱くなれます。