アメリッシュガーデン改

姑オババと私の物語をブログでつづり、ちいさなガーデンに・・・、な〜〜んて頑張ってます

【毒親から結婚の道 7】大人のラブストーリー映画「男と女」。人生を経たのちに出会う男女の愛は心を揺さぶる

《オババ》私の姑、人類最強のディズニーオタク。叔母の夫とは同級生

《叔母・勝江(仮名)》オババの妹、ヒステリー性障害を患う。娘を溺愛し結婚に反対。娘が駆け落ちすると、今度は婚約者に、これまでの養育費10億円払えと無理難題。

《優ちゃん》叔母のひとり娘、39歳。婚活アプリで知り合った太郎と熱愛、過保護母に結婚の邪魔をされ、太郎と駆け落ち、結婚する予定。

《太郎》35歳。高校時代に親を亡くし、一人で農家を切り盛する勤労青年。

 

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義理の叔父は大学卒業後、商社に勤め、途中退社。

自ら車関連の貿易会社を立ち上げたって話は聞いています。

海外を拠点にして日本に滞在するほうが少ないってことも。

 

オババと義理叔父の関係が複雑そうってこと、私、察しました。

探りをいれる前に、高速道路の運転でヒイヒイの私、そんなことどうでもいいって、帰りは国道で帰りたいって、それしか考えてなかったです。

 

で、畑の狭いあぜ道を走ってくるのは、車体が赤と黒の、見るからにクラシックカー

 

「あれは?」とオババに聞きますと

「フン」と。

「目立つ車ですね」

「目立つというより、派手ね。車が好きでね、オートマ嫌いだとか。カッコつけは相変わらずのようね」

マニュアル車。神ですか」

「あなたの運転からしたら、誰でも神ですよ」

「いえ、そんな、褒めていただかなくても」

「褒めてません」

 

チッ、わかっとるわ。

 

この日の朝は、風が柔らかく太陽の日差しもそれほど強くありません。雲が多いせいでしょうか、おそらく午後には、にわか雨になりそうな予感がします。

 

「それで、ここで迎え撃つんですか?」

「そうね。どうしたものかしら」というと、オババ、踵をかえして、太郎くんの家に向かいました。

 

クラシックカー、もう、すぐそこですが、私の車が門前に止めてありますので駐車スペースがありません。

 

「車、移動したほうが?」

「どこに」

「門のなかに」

「できる?」

 

できる?って聞かれて、できる! と胸をはって答えられるかい。

オババ、私の運転技量を甘くみてます。てか、見てない?

 

目測では、門の間隔3メートルほど、その先には広い庭がありますが、農家らしく、雑多なもので散らかり、頭から突っ込めば、帰りはバックしかない。

 

さりとて・・・、なんて考えているうちに、空気にガソリンの匂いが漂ってきて、クラシックカーが停車しました。

 

ドアが開く音がします。

 

関節部分に穴のあいたレーサーの手袋が運転席側のドアにかかり、黒いフラットシューズがみえ、サングラスをかけた白髪の、それも輝くような白髪の男があらわれました。

 

彼、ゆったりとした動作でこちらを見たのです。

そして、片方の口元をグニャって具合にあげ、皮肉な顔で笑いました。

この笑い方。オババのハリソンフォード似の笑い方に似てます。

 

オババも同じような顔で、しかし、同時に皮肉な表情も浮かべてます。

 

その瞬間、なぜか思ったんです。

 

オババ、なんでそんな普段着で来たって。その格好、まるで、近くのスーパーに行くおばさんじゃないかって。

なぜか、なぜか、もっとオシャレしてくるべきだったと、なぜか私が後悔しているんであって。

 

訳ありの男に会ったとき、女って老けたとかブスになったとか、思われたくないもんです。もちろん、義理叔父は元彼じゃない。てか、ないんでしょう。

それでも、洒落た、いかにも洗練された年配の男性を見て、私、ちょっと悔しかったんです。

 

だってね、高価なクラシックカーに黒いサングラス。高級イタリアブランドのシャツに穴あき手袋って。

 

お前、何様じゃあ〜〜!

 

で、すかし野郎、片手を上げると

「よ!」って言ったんです。

「元気だったか、委員長」

 

オババ、目を眇めると「勝江は?」って聞きました。

「置いといたよ」

「置いて来たんでしょ」

「ま、そうとも言えるかな。それにしも10億円とはまた」と言って、叔父、おおらかに笑いました。

「そっちが3500万円なんて見え透いた金額を言ってきましたからね」

「かなわんなぁ。学生のころから、全く変わってない」

 

叔父は近づいてくると、オババの肩をポンってたたき。そのまま玄関まで行き、引き戸を叩きました。

 

「優子、いるのか。出て来なさい」

 

返事がない。

 

「委員長、かってに娘を人質にしないでくれないかな」

「人聞きの悪い」

「そうかね、君の差し金だろう。アレの言ったことが本当のようだ。返事もしないと聞いている」

 

と、優ちゃん、玄関の引き戸のほんの隙間から、しゃがんでこっちを伺ってます。

 

おいおいおい、優ちゃん、見えてる、我慢ぜよ。

 

オババと義理叔父、同時にそれに気づいたんですが、彼のほうが一歩はやかった。片膝をつくと同じ目線で・・

 

「おやおや、世界一かわいい姫さま、そんなとこで何をしてる」

「パパ」

「覚えていてくれて嬉しいよ」

「パパ」

「顔をお見せ」

 

優ちゃん、少し、躊躇して、それから引き戸を開けようとして、つんのめった。

と、叔父、あっという間に開けると、優ちゃんの手を取り、それから抱き寄せたんであります。

 

「おやおや、姫は囚われていたと思ったら、ずいぶんといい顔になっている」

「パパ、パパ」

「ママが困ってるようだが」

「パパ」

 

優ちゃん、パパという言葉のイントネーションを変えるだけで、感情を表現するという高等戦術。で、パパ、それを理解しているようです。

 

「誘拐されたと聞いたよ。だから、助けにきたんだがね」

「パパ」

「わかった、わかった。ここにいたいのか」

「パパ」

 

「委員長、説明してくれないか」

娘の髪を撫で、目を細めながらパパが聞いた。

「長い話がいい、それとも、短いので」

「短いので結構」

「優ちゃんは結婚したいそうよ」

「そうか」と、叔父、娘を離すと、サングラスを外し、まじまじと優ちゃんの顔を見た。

「幸せそうな顔だ・・・。じゃあ、パパは話したい人がいるから、後でな」

「パパ」

 

叔父は振り返るとオババを見ました。

そのとき一瞬だけ、強い風が吹き、オババと叔父の間を駆け抜けました。

 

奇妙なものを見ました。

 

そこに、10代の若い男と女が、お互いの顔を見つめ、そして、言葉を失っている姿です。

 

そして、私は、なぜか叔母に、あの厄介で心を病む叔母に同情したのです。

 

なぜなら、そこには『男と女』

クロードルルーシュ監督が描いた名画の男と女が佇んでいて、そこに誰かが介在することなど、不可能にみえたんであります。

 

主役級のふたりの間で、脇役の人生。

ちょい役専門の私には、その気持ちが痛いほど飲み込めたんであって、

だよね、こんなふたりにタメはろうなんて、叔母、負け戦が決まっているようなもんで。狂ってなんぼで生きてきたんだって、そんなふうに思っちまいました。

 

to be continued

 

 💔    💔    💔

映画『男と女』

1966年公開されたフランス映画で数々の賞を受賞したラブストーリーです。

スタントマンの夫を事故でなくしたアンヌと妻が自殺したレーサーの男ジャン=ルイ。

ふたりは、子どもを預けている寄宿学校で出会い、そして、惹かれあいます。 

フランシスレイのサウンドトラックが、全編で、その愛を語る映画です。音楽が会話する映画です。今見ても、全く古さを感じません。

 

主演女優のアヌーク・エーメのシックな服装、なにげない仕草、どれをとっても成熟した美しさ、まさに完璧でした。

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