アメリッシュガーデン改

姑オババと私の物語をブログでつづり、ちいさなガーデンに・・・、な〜〜んて頑張ってます

【毒親から結婚の道18】映画『イージーライダー』、自由とはなにか。アラスカで見るオーロラの畏れおおい荘厳さ

《オババ》私の姑、人類最強のディズニーオタク。妹の夫とは同級生

《叔母・勝江(仮名)》オババの妹、ヒステリー性障害を患う。娘を溺愛し結婚に反対

《叔母の夫》米国に本拠地を置く会社CEO。自宅も会社も電話がつながらず所在不明

 

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ふいに叔父の姿が消え・・・

歩道を見るとうずくまっていました。

 

とっさに叔父のもとに走り寄りって、

 

「叔父さん」と呼びかけましたが、口を開くのも苦しそうです。

 

顔面は色を失い、いやな汗が額に滲んでいます。

 

「だ・いじょう・ぶ。心配いらんよ」

 

そうは思えませんでした。

 

「あそこに」と、叔父が指さしました。

 

木の周囲を丸く取り巻いたベンチが見えます。木陰になり涼しそうです。

 

叔父を助けベンチに移動すると、ドカンと椅子に落ち、それから、すぅーーっと息を吐きました。

まるで戦場で力つきた敗残兵のようです。

 

今日は気温の上昇が激しく、軽い熱中症にでもなったのかと疑いました。

 

「ひさしぶりでね。外に出るのは、脅かしたかな」

「い、いえ」

「もう、良くなった」

「本当ですか」

「心配はいらない。立ちくらみだ・・・、しかし、どうしてここに?」

 

返事ができない。と〜〜てもまずいです、この状況。

 

「えっと、その、・・・あの、お台場にショッピングに来て、なんでか迷って、それで、その、歩いてたら、ここにいて、あ、不思議ですね」

 

苦しすぎっ、言い訳になってねぇ〜〜。

 

「そうか、委員長だな」

 

返事、期待しないでくださいって顔で地面に視線を落としました。

 

「まったく、昔から、委員長は」

 

まだ、日差しは強く、一向に涼しくなる気配はありません。

叔父は薄く笑いました。

 

「あなたも大変なようだ。休むついでに、昔話でも聞くかい」と、叔父は、ひとり言のように言います。

 

顔色は戻っており、先ほどのような苦しげな様子もありません。

 

話、大丈夫です。私が言い訳を考える時間、ちょっと必要であって、であっても言い訳があるわけないけど。

 

異邦人のカミュばりに「太陽が眩しかったから」って淡々と言うか?

不条理な世界ですって逃げっか?

 

「老人の思い出話しだから、長くなるがね」

 

私は、こくりとうなづいた。

 

「僕が商社マン時代のころの話でね。もう、随分と昔のことだ。仕事でアラスカに飛んだことがある。

その日はアンカレッジの商談が思ったより早く終わって、1日余裕ができた。

冬だったか晩秋だったか、忘れてしまったが。ともかく、その時、フェアバンクスでオーロラを見ようと決めたんだよ。

車で6時間くらいだと聞いたからレンタカーを借りてね」

 

そこで叔父は息をつきました。

私は興味と不安を感じながらも、叔父の話に付き合いました。

 

頭のなかでは、太陽が眩しかったって繰り返しながら。

どんなことも繰り返し考えていたら真実になるって、きっとそうだって。

 

「レンタカー屋の疲れて太った女が、

『そんなスーツで行くような場所じゃない、crazy!』って言いながら、どうでもいいような様子でキーを渡してくれた。

僕はああいう投げやりで、頭の悪い女が嫌いじゃなくてね。

『死んだら、骨を拾ってくれるかい』って、ジョークを飛ばしたら。

『死んでもいいけど、車は返して』って、口紅の取れかけた顔で笑いやがった。

 

大声で笑ってやったよ。仕事は無事に終わり、それも思った以上の成果がでていた。さ、これから冒険だと気分が高揚していてね。

 

レンタカー屋でJEEPを借りてから、近くのスーパーで、食料を大量に買い込んで積み込んだ。一応の準備はしたと納得してから・・・。

 

それから、ハイウェイを北へ北へと走りはじめた。

 

アメリカって国は、田舎に行くと、本当になにもないんだ。

ただただ道路が真っ直ぐにあるだけで、周囲は平原が広がっている。どれだけスピードをだしても、誰も見ちゃいない。

 

3時間くらいドライブしたかな。

僕は車の運転が好きでね。運転すると疲れるっていう人もいるが全くない。かえって元気になってくる。

 

車外では徐々に雲が厚くなった。

ちらちら雪も降り始めて、まずいかなと頭のなかで警告音が聞こえたがね。

 

そうだ、イージーライダーって古い映画が好きなんだな。

自由に向かって、ただ走る映画で、いつかやってみたいと思っていた。

でもまあ、そん時の僕がなにから自由になりたかったのか、実際には理解していなかった。

 

ただ、ピーター・フォンダを気取って、窓を半開にした。

いっきなり冷たい空気が飛び込んできた。冷たいなんてもんじゃない。

そんな言葉じゃ、まだ足りんくらいだ。痛かった。

 

寒さが尋常じゃないんだ。

凍えた空気を吸うと、まず喉がやられる。

突き刺すような痛みに数秒で耐えられなくなったが、それが困ったことになった。

窓が凍りついて閉じなくなったんだよ。

 

路肩に車を停車して、なんとか閉めたが、ひどい思いをした。

手動だったから、まあ、なんとかなったが、

昔から愚かな人間だよ、それはいまでも変わらんがね。

 

途中でガソリンを入れたときには、JEEPのバックには、氷みたいな雪がへばり付いていた。

こういう寒さは経験したことがない。

レンタカー屋のしょぼくれた女が哀れんでいた理由がわかったよ。

 

 

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道路も凍り、粉雪が舞い上がるようになり、

次第に雪は本降りになっていたね。

 

ホワイトアウトの状態になるのに時間はかからなかった。

周囲が真っ白な雲状の雪におおわれて何も見えなくなる。

向かい側からくる車のライトは、すぐ隣にくるまで気づかないんだ。

その光も薄ぼんやりしたもので、

 

ゾクゾクするような命の危険を感じた。

生きてる実感というのかな。

 

まだ、ナビもスマホもない時代だったから、地図と標識だけが頼りのドライブで、それが見えないんだ。

ハンドルにしがみついて、フロントガラスを凝視しながら、スピードを抑えて運転した。

 

数時間もすると、自分が前に進んでいるのかもわからなくなっていた。

確かにエンジンはかかり、動いているはずなんだが、止まっているように思えてね。

 

幸いなことに、途中で、雪が止んだが、その頃には、もう夜になっていたよ。

 

そして、周囲の景色がいっぺんした。

 

空気が澄んでいるから、無数の星が見える。

 

そして、星が消えたと思った瞬間、ふいにボウっと光が現れ、薄い白に近い雲のようなグリーンの波が押し寄せて来たんだ。

 

「おおおおおお」と思わず声が出たよ。

 

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僕は車を停めて、それをボウーっと眺めた。

 

ただ、眺める以外になにもできなかった。

 

神々しい光というか、神の啓示を受けたような瞬間でね。

僕は全くの無神論者だが、その時ばかりは神の存在を感じた。

 

オーロラは、荘厳で怖い。

 

何層にも重なり、カーテンが降りるようにふり注いでくる波だよ。

僕は感動という陳腐な言葉では言い表せない感情を覚えた。見せてあげたかったなぁ」

 

腕を前に差し出して、叔父は体でそれを表現して、それから、かすかに微笑んだように見えた。

 

「勝江には申し訳ないが、これまで、いろんな女を愛してきたのは事実だな。

だが、あの時、あの瞬間に、これを見せてやりたいと思ったのは、なぜか委員長でね。

所詮そういうことだ、若いころから全く成長もしてない。悪態をつきたくなったよ。それから起業して米国に本拠地を置いたのは知っての通りだ。その時も勝江には別れることを提案したが断られた」

 

そう言いながら叔父は、前方にあるビルに視線を動かした。

 

「アメちゃん。頼みがある」

「なんでしょうか?」

「黙っていてくれないか」

 

叔父の視線を追った。

その先にはビルがあり、有明がん研究所と書いてあった。

 

私は言葉を失った。

 

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映画『イージーライダー

 

1970年日本公開。

ピーター・フォンダ主演。

 

ハーレーダビットソンで、ひたすらアメリカのハイウエーをぶっ飛ばす映画です。ベトナム戦争が長期化して、反戦運動が高揚した時代、殺伐とした当時のアメリカを代表して、この映画はニューシネマと呼ばれました。

 

実は、後味がよくなくて好きじゃないですが、男性受けしそうな映画です。

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