【毒親から結婚の道 8】映画『人間失格/太宰治と3人の女たち』って、破滅型男と結婚した女は生きておれない
《オババ》私の姑、人類最強のディズニーオタク。妹の夫とは同級生
《叔母・勝江(仮名)》オババの妹、ヒステリー性障害を患う。娘を溺愛し結婚に反対。娘が駆け落ちすると、今度は婚約者に、これまでの養育費10億円払えと無理難題
《優ちゃん》叔母のひとり娘、39歳。婚活アプリで知り合った太郎と熱愛、過保護母に結婚の邪魔をされ、太郎と駆け落ち、結婚する予定
《太郎》35歳。高校時代に親を亡くし、一人で農家を切り盛する勤労青年
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「自動車屋で、こういうのもなんだが」と叔父が笑いました。
「今の車はね。コンピュータみたいなもので、内部を開いても全くわからん。その点、こういう昔のマニュアル車はね。エンジンはエンジン、クラッチはクラッチ、ブレーキはここだって、わかりやすい。自分で触れる 、修理できる。そういうのが性に合っています。エンストしても、上から水ぶっかけて冷やせば、なんとかなるって、そんな機械が面白いさね」
叔父の乗るクラシックカーについて聞くと、こんな説明してくれたんで、きっと、シルバーグレーのこの男、モテんだろうなって思ったわけです。
破天荒で、周囲に迎合しない、自分の道を歩くことしか頭にない。
いつの時代にも、破滅型の人っております。
叔父はそういうタイプの男だと思う。どういう人間かというと、勝新太郎という俳優と太宰治という作家の中間地点。
説明するよ
勝新太郎は昭和の映画俳優であり、破滅型の超大スターでもありました。
座頭市という映画で人気を不動のものとした結果、ハリウッド版座頭市『ブラインド・フューリー』という映画も制作されたほどです。
勝の最も有名な逸話はハワイのホノルル空港。
大麻所持で捕まったときの記者会見で、悪気がないちゅうか、人を食っとるちゅうか。
なぜ、大麻を所持していたかっていう記者の質問にね。
「大麻がパンツの中に勝手に入っていた」と吠えたんであります。
「今後、パンツはどうするんですか?」てな質問に
「もうパンツは穿かないよ」って煙に巻いたんです。
ないないないない・・・
けど、きっと、ものすごく面白い男で、包容力もあろう。
こんな男に惚れた女は大変だと思ってしまう。
さて、一方、破滅型作家として有名なのは太宰治。
3回の自殺未遂のすえ、4回目の心中で命を落としました。
こんな男に惚れた女は、もっとヤバい。命の危険さえあります。
太宰の名言は多いです。
「いまは自分には幸福も不幸もありません。ただ、一さいは過ぎて行きます」
(それ! 誰でもすぎてっとる、テレビを見たり、お菓子たべたりで、あっという間じゃ。そこに幸も不幸もないって、いちいち考えんて:アメリッシュ 談)
「親がなくても子は育つ、という。私の場合、親があるから子は育たぬのだ」
(それいっちゃあ、おしまいよ:アメリッシュ 談)
「今の女性は個性がない、深みがない、批判はあっても答えがない、独創性に乏しく模倣ばかり。さらに無責任で自重を知らず、お上品ぶっていながら気品がない」
(それ、今か? そっから70年過ぎたぞ、変わったか?:アメリッシュ 談)
「なぜ生きていなければいけないのか」
(生まれたからだよ:アメリッシュ 談)
豪快な勝新太郎と繊細な太宰治、真逆のタイプですが、破滅型ってところでは一致しており、義理叔父は、その中間な感じ?
だってね。
こう言いやがったわけよ。このダンディ叔父、照れもせず。
「困ったな。時期が悪い、この結婚は」
「どう、悪いっていうんですか」とオババ
それに対して、ま、叔父、恥ずかしげもなく自分勝手な意見を解き放ったわけ、次なる言葉を。
「実はね、米国に子どもがいて、将来的に事業をついでもらいたいって考えてる」
「その子ども、妹の子じゃないってわけですね」
「ははは、妙なことを言うね、委員長、そうだ」
「それで?」
「離婚したいと考えてる」
ちょっと、待ったぁ〜〜!
少し、休もう。
いっぺん、止まろう。
オババ、きっと遠い昔、はるか昔、この男となんかあった。そして、結果、妹に奪われた。ちがうか?
でもって、それで良かったぞ、こんなクズ。
いったい、何歳だよ。
あと寿命的には何年だって話だよ。
今更、叔母と離婚したいって、それも娘が結婚するって聞いて精神的におかしくなってるときに、更に離婚つきつけて、どうすんの。
オババの顔が険しくなりました。
「今更、そんなことを」
「いや、取り合ってくれなくてな。まあ、あの人が興奮すると、なかなか手を焼くんだ。ともかくだ。もう別居状態が10年は続いているから、裁判所に行ってもいいと考えている」
浮気を繰り返しても妻を愛した勝新太郎、
浮気するたびに相手の女を殺した太宰治。
この中間は、離婚か!
この男。
若いころからモテたんだろうな。だが、これほど結婚に向かない男もいないだろう。
優ちゃん。
なんてかわいそうなんだ、未熟な母と破滅型で身勝手な父。
私、全身全霊で応援する!
あんたを守る!!
父である叔父がなんと言おうと二人の結婚を敢行しようって
で、納得がいかないのは、私だけでなく、オババもであって
農家の庭先で、団交はじまった訳です。
ピィ〜〜と、上空で鳥が泣いてます
「なにがあったんです」
オババが叔父を問い詰めました。
いろいろブツブツ言っての、これであったわけです。
「いや、委員長。言った通りだよ」
「わかりません」
「昔っから、そういう所は変わらんな。娘の結婚に賛成はしたいが、もろもろの事情で、そうもできんってこったよ」
「あなたという人は、いつも自分ばっかりで」
「否定はできん」
叔父、皮肉に口元を上げ、ニヤリと笑った。
「離婚したら、それで、勝江がどうなるか、わかってんですか」
「だからさ、委員長。あなたの出番だ。テストんときも、ノート貸してくれただろう。その要領で頑張れ、応援するぞ」
ムカムカするぅ〜〜〜、って私。
オババの顔も歪んでます。
「ノートは盗んだんじゃないですか。応援って、あなたが言うこっちゃない」
「そうかね。まあ、なんと言われようと、この結婚は全力で阻止だ」
・・・
「え? パパ」
優ちゃんが口を挟みました。
可愛い声で、パパって。
でも、39歳です。忘れないように書いとこう。
「僕の姫、だから、お母さんのことは頼んだよ。その太郎くんって男と、よく相談しなさい。パパは無理だ」
「パパは、それでいいの」
「いいんだよ。・・・祝福してやれんが。そこにいる委員長とオマケがお前にはついてる」
「パパには?」
「パパは、ほら、ママの味方をして敵ってわけだよ。なかなか、これは手強いぞ」
そう言い放つと、叔父は優ちゃんの頬を2回、ぽんぽんと軽く叩いた。
「パパ、なんだか寂しそう」
「そうか、悪いパパだ。じゃあ、バイバイだ。元気でな」
そう言って、門前のクラシックカーを見ました。
「ここで、かっこよく立ち去りたい場面なんだが、あのオマケ車が邪魔している。移動してくれないかな」
はっ。
私の車、いい仕事してる
へへへ〜〜んだってんだ
(右手で鼻の頭をこすってやった)
映画みたく、かっこいい悪役として去ろうなんて、普通の生活にゃあない。
悪役でもヒーローでも、逃げたいとき都合よく自動車が来たり、電車がきたり、ロケットがきたり、宇宙船がきたりしないのが、現実の生活で。
もっと言えば。
高い階段の手すりの上から落下して、怪我しないって
それ、ない!
普通は病院送りだ。よくて骨折で3ヶ月の休養が普通ってんだ。
でね。
もう自慢しとく。車の運転が、マジで下手なんだぁ!
とくに高速の合流と双璧をなす縦列駐車およびバック駐車。
この私が簡単に車を寄せられるなんて、甘い希望、簡単に打ち砕いてみせようぞ(ここはキングダム、楊端和風で)。
私、颯爽と車に乗りこんだ。てか、かなり動揺してた、って言い訳しとく。
まず、最初は縦列駐車で横に寄せようと試みて・・・
ムリだった!
畑前の細い一本道、狭いから簡単にはバックもできないわけで、門のなかに入れて、道を開けようっとは思っている。
その試みは、とってもナイスって、たぶん、思う。
でさ、バックしていくと、なぜか門柱にカスリそうになったわけ。
だから、元に戻して、切り返しだって思うでしょ。
したよ!
したとも、皆の衆!
切り返して、前に出て、再度、バックしたら、なぜか更に門柱に向かって行くんであります、私の車。
どうも、私の意思に反して動こうかと、車のやつ意思をもって決定したようで、すでにAIかって。自動運転かって。
きっとそうだって、どうして反抗するんだって。
10回くらい切り返して、もう自分でも訳がわからなくなって、
結果として、車の中心と門柱の中心が、まるで測ったようにピッタリ!
どんどん、門柱に近づくていく。
ちがう!
MMA(門と門の間)で、MCM(門柱に向かう)じゃないって、AIにも納得できるよう暗号化して、ハンドルを諭してみたけど、聞き入れてくんない。
私、一回、自分に言い聞かせた。
落ちつこうって思った。
そう、無意識にMCMしてたって、ほんとはMMAなんだって
暗号を理解してないんじゃないかって、自分でも思った。
「嫌がらせかい」って叔父が
「いえ、彼女、ナチュラルボーンキラーですから」と、オババ
そこ、助けるとこっしょ、涙目の私。
「なんだね。それは」
「車に乗せては、人を殺す生まれつきの才能を持ってます」
そして、最終的には叔父が言ったんであります。
「わかった、わかった。運転、僕がかわろう」って
叔父、この場では悪役系。
のはず、けど、なぜか、アホの車をスルスルってバックして入れて、
クラシックカーのフォンを鳴らすと
むちゃっ、かっこよく退場した訳であります。
「アメリッシュ、そうそうできる運転じゃない」
って、オババが講評を述べた。
ほめてないし・・・
to be continued
『人間失格 太宰治と3人の女たち』
正妻役の宮澤りえ
愛人役で小説『斜陽』のモデルになった太田静子に沢尻エリカ
無理心中ではなかったかと言われる愛人山崎富栄役に二階堂ふみ
この3人の女性と太宰を描いた実話が映画化されました。
小栗旬が演じる太宰は、色っぽくもヤバい!
なぜ、こういう男に惚れて、女は自ら破滅の道を選ぶのだろうか・・・、映画をみれば理解できるだろうか。