《その2》憧れの箱根。桜が散りかけ、忍者バスも走る。しかし、なぜ忍者? それもバス? そして悲劇が・・・
前回のブログで、箱根園からの忍者バスに乗り遅れたてん末を書きました。
しかーーし、神は見捨てなかった!
「ま、まて! お主。これはどういうことじゃ」
「なんですか、師匠」
「箱根園発は終わっておるが、まだ、元箱根からの最終便15時45分に間に合う!」
「今は、15時12分36秒きっかり」
「走るぞ」
「はっ!!」
必死の形相で箱根園から元箱根まで運転。駐車場に車を停車して、師匠とアメリッシュ、転ばんばかりの勢いで走り出しました。
ところで、最近、わかったことがあります。年齢による転び方です。
年を重ねると転び方が変るという真理に気づきました。
20歳前後の若い時なら、つまずいても足腰の筋肉が耐え、めったなことでは転びません。
しかしこれが、若いから、お若く見えるという年代になりますと、悲しいかな、転びます。しかし、大丈夫、手で防御することができ、肘や膝を打つこともありますが、ま、軽い擦り傷程度ですみます。
その後は、急坂を転げ落ちるように、まだ若いからまだまだ若いと。そして、時間の加速度的方程式により、あっという間にまだ若いもんには負けんという年代になります。まだまだ若い頃から徐々に、身体を鍛えていない方は顔面から真っ逆さまに転ぶようになるのです。前歯が入れ歯になる原因ともなるので気をつけねばなりません。
実は、アメリッシュ、先日、そんな風に豪快に転んだ女性を目の当たりにしました。年の頃、40代後半から50代中頃、わりとセレブ感が漂う女性が顔面直撃でこけたのです。彼女、転んだのち、しばらく倒れまま、「私に何が起きた?」と煩悶しているかのように起き上がりませんでした。
それから呆然とした表情で立ち上がり、恥ずかしそうに顔を抑えて歩き去りました。見なかった振りをするのが武士の情けと思った瞬間であります。
「だから、走るの、危ないでござるよ、ハアハア」
「どっちを選ぶでござるか。ここまで来て、おめおめと忍者バスに乗らずに帰るか、それとも乗ることを取るか、ハアハア」
「どっちも乗るほうですが、師匠、ハアハアハアハアハアハア」
「もっと走らんか!」
ひぇーーーーーー!
さて、そこまでして到着した元箱根、息も絶え絶えに、なんとか忍者バスに乗り込みました。
忍者バスには運転手が2名。陸上を運転するバス用とボート用の運転で必要だと、忍者装束に身を包んだガイドさんが教えてくれます。
ところで、忍者ガイドさん。『芦ノ湖水陸両用バス導入計画』の一部なんでしょうが、微妙に辛いものがありました。
普通の人なのです。このガイドさん、ものすごく普通。こういう人が無理をして、素人芸で人を笑わせようとするときのあるある。それは話している本人だけに受けているという現実です。
忍者ガイドさん、マイクで話すたびに、いちいち、ここは面白いことを言ってますと教えるためだと邪推してしまうほど、自ら笑います。
そして、すべての行動に忍者の術だと強弁します。そしてさも面白いことを言ったかのように、吹き出します。(オイ! そこのスタッフ、この可哀想なガイドさんに、どんな教育をした)
乗客は、なす術もありません。
ま、そういうことは置いておき、バスというより、吹きさらしの荷馬車に乗せられた気分で湖畔沿いを走りました。ただ、これ、芦ノ湖の風を受けて、結構、気持ちいいです。
ついに、芦ノ湖到着。バスの周囲を歩く人々に向かって、忍者ガイドさん、
「お手振りの術をお願いしていきたいと思います、うふふふふ」とのたまった。
さ、さむい。いえ、ガイドの方、一生懸命です。しかし、隣で友も下を向いている。
乗客は、こういうノリについていくべきか、いかないべきなのか、更に加えれば、ついていかなくてはならないのか。平日ゆえに、満員ではないのですが、それにしてもみなの薄い反応。よくある光景です。
遊園地でこうした乗り物によくある、お約束の練習時間もありました。
運転手さんが水陸で違うため、交代する時間に、乗客は芦ノ湖突入のための掛け声を練習するのです。
「では、声を揃えて3、2、1 忍ジャー!」
「3、2、1 忍ジャーあああ」
「声が小さいですよ。さあ、もう一度! ふふふ」
「どうする?」
「よいか、ここは空気を読め!! という場面だ」
「へ、へえ、お代官様」
すみません、日本人です。羞恥心と恥がないまぜとなって、奇妙な自尊心で満腹の日本人なんです。言えと言われれば言いますが・・・。
「3、2、1忍ジャー!」
ゴゴゴゥーーー! ザッバーーン!!!
突入は大迫力でありました。
吹きさらしの窓からの風は気持ちよく、45分間の忍者旅、確かに生きている実感、ありました。
しかし、師匠よ、たとえ短い距離でも、もう全力疾走は無理な年齢でござる。