「シロタエギクとラベンダーとな」
おお、悪友Yよ。よくぞ戻ってくれた。
「困っているようだな」
「ブログ、絶対! 読まないでとラインしたのですが」
「そういう時は読んでくれとラインするものだ。さすれば読まぬ」
人というものは見るなといえば見たくなる。その心理を深く追求した結果とは思わなかったか。ふふふ・・・、罠にはまったな。おばさんは特にそうした罠に弱いものだ。心ならずもその領域に達しているので、よくわかっておる。神転じて仏の掌で踊れ! 友よ。
「怒ってないよね」
「そんな心の狭い人間と思っていたか」
「いえ、滅相もない」
「それで、コーナー花壇が暴走しているとか」
「そうです。師匠! どうすればよろしいかと」
「アドバイスを聞きたいのだな。では、ここで誓ってもらおう」
「はっ」
「全てを、疑いなく実行できるか」
「はっ」
「誓えるか」
「はっ」
「怠け者にしては、よい返事だ」
「はっ」
「植物というのは、まず、ストレスに弱い。これはどんな植物でも言える。生きとし生けるもの全てのこと割りでもある」
「なるほど、理にかなっております」
「今回のコーナー。まず、どちらが駆逐したかだ。犯人はラベンダーかシロタエギクが、それによって、二つの植物の、どちらがより強かったかわかるであろう。その上で強いほうに、より多く手を加える」
「どう調査すれば」
「それを正確に知るには、この1年間の生育過程のノートおよびビデオ撮影があれば確実であろう」
「し、師匠。ご無体な」
「わかっておる。無駄と知りつつ言うてみた。では、花壇に植えていた植物から証拠集めしよう。まずマリーゴールド。これは1年草である。自ら命を絶ったのはまちがいない。寿命であろう。すなわち、問題はその他の植物である。アベイアコンフェッティ、フィリヤブラシ。よくまあ、手のかからぬ草花を集めたものだ。被告であるシロタエギク、ラベンダーの、どちらかが、それらを殺害したとか。そこが事実であるか、よく調べたか」
い、いつの間に裁判に? しかし、ここは大人しく、なにせ師匠だ。いや、裁判長か。本当に仏の掌で回せているのか、私?
「そ、そう言われると」
「良いか。大事なのは証拠じゃ。調べてまいれ」
タタタ・・・!
「お待たせいたしました。見てきました。細々と他の植物も生きおります」
「つまり、殺人ではない。不当占拠くらいの罪であろうな、まあ犯人は二人、しかし、証拠はない。両者とも推定無罪というところか」
「???・・・・・。して、その手立ては」
「最初に答えは申しておろう。ストレスじゃ。強い二つの植物にストレスを与えよ。すれば、弱体化して、そこそこ仲良くなっていくであろう」
「はっ!」
「納得したら、まず、コーナーに行け」
「はっ」
「行ったか!」
「はっ」
「では、ストレスを与えよ」
「どのように」
「罵りまくれ! シロタエギクのくせに白くない! とか、匂うぞラベンダーとか。思う存分、罵りまくれ、罵詈雑言を浴びせかけるんだ!」
「そ、それがストレス」
「そうじゃ、概してホームセンターなどで販売される草花は繁殖力たるや半端ない。最初は可憐な風情で猫を被っている、しばらくすると我が道を謳歌しはじめる。ストレスが少なすぎるのだ。励めよ!」
まだ、怒っている! 間違いない。