アメリッシュガーデン改

姑オババと私の物語をブログでつづり、ちいさなガーデンに・・・、な〜〜んて頑張ってます

小説【本能寺への道】明智光秀によろしく

半年前にこちらで連載していた。戦国時代に私とオババの意識が転移するコメディ物語。実際は入れ替わりと言うのだそうですが。

戦国時代に転生した私と姑が明智光秀と出会います。 

 

現在、その続編を「カクヨム」に書いております。この物語はエッセイ風歴史小説とかってに自分に思っております。

 

お読みいただければ、とっても嬉しいです。

では、前回と同様、戦国時代に貧しい庶民のマチの体に意識が入った私の物語です。笑い飛ばしていただきながら、楽しい時間をお過ごしいただければ幸いです。

 

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本能寺の変明智光秀によろしく」

小説:【本能寺への道】明智光秀によろしく


 朝の目覚めはいつも辛い。低血圧だからだろうか。


 目覚めても、しばらくぼうっとして体が動かない。

 

 現実へと意識が戻ろうとしていたが、低血圧の私は朝が苦手で、だから、ぼぅ〜と……

 

 ぼぅ〜と……

 いや、違う、なんか違う。なにこれは?

 

 デジャブ?
 思いっきりの既視感(デジャブ)!

 

 ありえないほど、ぱっちりと目覚めたんだ。
 ムッチャ爽快なんだ。
 これまで生きてきて、こんな気持ちの良い目覚めは経験したことが……

 ある!

 ありすぎて、思い出したくもない。

 

 まさかね。
 あまりに覚えがあって、いっそムカつく。

 片目を開けた。天井に古びた木の梁があり、寝返ると何かに当たった。

 

 ああ、やっぱり!
 ひなびたを通りこした壊れかけの廃屋、現代人ならそう思う。


 しかし、前回、マチという貧しい農民に意識が転移して、戦国時代を足軽になって駆け巡った私には、この貧しい小屋が以前よりマシになったと感じた。

 

 私の意識が未来に戻ったのち、本来のマチは足軽をやめたはずで、久兵衛が給金を与えたのだろう。うん、戦国庶民のおカネおマチ、私とオババが稼いだ金で少しは生活が楽になったな。

 

 だから、小屋もマシになっているし、ちょっと見ただけでも道具も綺麗になっている。

 

 そんなことよりも……
 これは、もうね、またかって、ため息つくしかない。

 

 わかってますって、朝っぱらから、ほんと快適なんだから。

 私の意識が転生した20代のマチの体って使いかってが良いんだ。


 だって現代の私と比べて、マチ、生活が日々ライザップだから、もうね鍛えきってる。ズドンズドンって、あのCM音楽が聞こえてくるくらい。そして、現代の私のダレた体が、戦国時代のマチの体で回転して、マチ、嬉しそうに両手でガッツポーズ。

 

 それ、どんなにCMオファーがきても出ないから!!

 だから、両目を開けて、

「オババ!」って叫んだ。

 

 どうせ、オババもマチの母親カネとして意識が入れ替わっているはずだ。
 でね。オババと叫んだ瞬間、

 

「おマチ〜〜〜」って、オババの代わりにいきなり若い男がのしかかってきたんだ。

 

 誰! この若者は、なんか馴染みがあるけど。

 もう、お約束のような展開。
 またか。また夜這いで物語を始める気ですか。

 

 そして、前に見たときより、若者、ちょっと成長してた。あの時は、まだ少年で兵に出ると言ってたマサだ。前回、この世界に目覚めたとき、最初に夜這いしてきた少年なんだ。

 

「おマチ〜!」
「何してるの」
「何って、そりゃ、俺、あんたの婿だから」

 

 私は男の下半身に、渾身の蹴りを入れて立ち上がった。
 うっくと言ったまま、マサは目を剥いて土間に転がり落ち悶絶してる。

 問答無用の専業主婦をなめんな、現代でだけど。

 

「マ、マチ〜〜、なんでだ」
「あんたが私に触れるなんて450年早いわ」
「ちょ、ちょっと」
「今は何年だ」
「へ?」
「何年って聞いてる」
「何年って。何年もなにも、マチ、いったいどないしたんや」

 

 そうか、この時代の不便さを忘れていた。人って、上流に行くってのは本当に簡単なんだ。数日で楽な生活に慣れきった。1週間も文明世界にいると、戦国時代のありえない不便さを忘れる。

 

 庶民は洒落たカレンダーなんて持ってないし、時計もない世界だったんだ。

 

「もしかして、今が天正何年とか知らないよね」
「知るはずがないよっ」
「威張ることじゃないから」

 

 それに、母親カネの姿が見えなかった。まさか、オババ、嫌がらせかい。マサの母親と結び、この男を婿にあてがって姿を消したとか。

 

 いやいやいや……

 

 さすがに姑だから。そんなこと息子の嫁にするこっちゃない。

 

「痛かったか、マサ」と、私はまだ土間にうずくまっているマサに聞いた。
「おマチ、ひでえやないか。金の底がついたって、だから、俺を婿にするって、そういう話やないんか」
「残念だったな、マサ。その話は消えた」
「勘弁してくれや。あれいつだっけ、随分と昔だけど、これで2回目や」

 

 そうか、そこだ。

 

「マサ、前にウチに来て、蹴飛ばされた時から春は何回来た」
「なに、それ」
「だから、何回」
「えっと。俺が明智さまのところへ行った春からやから」と、マサはうろんな目で指を折った。
「6回かな、いや、7回かぁ?」

 

 使えんやつだ。
 前回に転移したのは天正元年(1573年)だった。その後、6年か7年は過ぎている。ということは、天正7年(1579年)頃になる。

 

 あっと思った。これは本能寺の変まで、あと2〜3年。まずい時期に意識が入れ替わったものだ。信長の戦いはますます激しさを増して、家臣はこき使われているはずだ。

 

 それにしても、オババ、どこへ行った。
 こんな嫁の貞操が危ないっちゅうに、のん気にまた外へでも散歩に出かけたか。

 

「ところでね、マサ」
「なんだよ」
「私の母親。カネを見なかったかい?」

 

 マサは驚いた顔をして、口を半開きにした。

 

「なに言ってるんだ、おマチ」
「だから、おカネさんだよ」
「おカネさんなら、前の冬に亡くなっただろう。大丈夫か」

 

 亡くなった?

 

「嘘だ」
「おいおい。本当に大丈夫か?」

 

 オババが死んだ。いや、オババの意識が1573年のときに乗り移ったカネが亡くなった?
 あの人のいい顔をした、きっと、オババより大人しくていい人だったにちがいない、カネさんが。

 

 戦国時代は厳しい。貧しい庶民は暖をとる薪や炭が少なく、冬は凍死するものが多かったから仕方ないにしても。

 

 え? で、では、オババはいないのか。

 

「ど、どんな、どんな理由で」って、はじめて声が裏返ってた。
「あの冬は寒かったし、それで風邪をひいて、そのまま、冬を越せなんだ」

 

 オババ。
 では、ここに飛んで来たのは私ひとりなのか。
 途端に、冷たい汗が背筋をツーっと落ちた。

 

「マサ、私と結婚したのか」
「だから、そういう話やったろ。おカネさんとマチは明智さまのとこじゃあ、随分と戦功をあげたって、そりゃ村では評判やったけど、帰ってきたときは、なんかおかしかったで。ぜんぜん覚えてないって、言うてな」
「それで」
「冬にカネさんが亡くなって、マチは金も使いきったんや。年もいってるから相手もいないって」というところで私は睨んだ。

 

 たとえ、あれから6、7年すぎても、まだ26歳くらいのマチに、なんちゅう事を言った。年がいってると? マサよ、今、お前は期せずして、25歳以上の女を敵にまわしたよ!

 

 なんてこと考えてると、ガタピシを大きな音を立て板戸が開いた。

 

 土間にあぐらをかいていたマサが顔を上げた。冷たい風が吹き込み、炉端の炭火を舞い上げた。

 

 

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