お題「#おうち時間」は映画でひととき
映画と小説『ラブストーリー ある愛の詩』
1970年に、当時の世界の若者たちを虜にした映画があって、日本でも大ヒットしました。
『ラブストーリー ある愛の詩』という映画です。
小説もいい。
物語の冒頭からしびれます。グッと心を掴まれます。
「どう言ったらいいのだろう。
25歳の若さで死んでしまった人のことを。
彼女が愛していたもの、それはモーツァルトとバッハ、そしてビートルズ。
それに僕」
「どう言ったらいいのだろう」
という1行目で、なに?と見事に人をひっかからせ、
次に、「25歳の若さで・・・」と続く一文で転換させ、
しかし更に、この次の一節が書いた作者のセンスを引き立たせています。
「モーツァルトにバッハ」、クラッシックが好きなお堅い音楽関係の女かと思わせといての、当時は、まだ古典じゃない現役の「ビートルズ」を入れ込んでます。
最後に、「僕」って、なにこの巧みな修辞法。
いったいどんな女だ?って、もうね、いわゆる言うところのキャラが立っちまくっています。
だから、この冒頭シーンで映画も小説も、まっすぐに引き込まれると思います。
物語自体は昔からある王道のストーリーで、なんのヒネリもない。
ハーバード大学のエリート学生でアイスホッケーのスター選手、その上、由緒ある家生まれであるオリバーと移民の貧しい音楽科の学生ジェニー。このふたりの恋物語です。
恋に落ちる。
結婚する。
病気で別れ。
オリバーの父親は家柄が違うと、この結婚に大反対と、ここにも予定調和的な内容がてんこ盛り。その反対を押し切って結婚するふたり。しかし、幸せもつかの間、妻となったジェニーは白血病になります。短い恋の物語は終わりを告げるしかなかったのです。
こう書くと、ほんと軽い。
あまりに典型的で、こっちが恥ずかしくなるほどの王道ストーリーです。
いわば定番の王子様と貧しい家の娘という古くからあるネタを、現代的に翻訳したストーリーです。
シェイクスピアの昔から、こうした「ロミオとジュリエット」的な悲恋物語は、なんども作品になってきました。
だが、このありふれた物語が陳腐ではない。せつなく観る人の心を打つ。
小説は2100万部も世界で売れました。
映画は世界中で大ヒットしました。
その理由はなんでしょうか?
しばらく、黙考してしまった。
座禅でも組んで滝のまえで考えたいなんて思ってしまった。
そして、わかりました。
綺羅星のようにきらめく『言葉』の数々が、その理由なんです。
冒頭の文章にもあるように、心をうつウィットに飛んだセリフや文が多いのです。
例えば、ラドクリフ大学の図書館でふたりが会うシーン。
ジェニー「あなたはバカな金持ちでしょ」
オリバー「実はね、僕は貧しいけど賢い男なんだ」
ジェニー「私も貧しくて賢いのよ」
オリバー「どこが君は賢いんだ」
ジェニー「あなたとお茶を飲まないから」
オリバー「君をお茶になんか誘わないけどね」
ジェニー「だから、あなたはバカなのよ」
いかがでしょうか?
この会話の流れ。
うますぎます。独身時代にこんな言葉を嫌味もなく吐いて、男の子を翻弄できたら、なんて思ってしまう。
ね?
そう思わない?
婚活女子よ!
この映画で最も有名な言葉は「愛とは、けっして後悔しないこと」ですが、それよりも散りばめられた言葉、言葉、言葉がすべて宝石のようなんです。
フランシス・レイ作曲の映画音楽も心にしみます。
Love Story - Francis Lai (ある愛の詩)
映画『ラブストーリー ある愛の詩』
監督:アーサー・ヒラー
原作・脚本:エリック・シーガル
主演:ライアン・オニール
アリー・マッグロー(のちのスティーブ・マックイーンの妻)
原作はエリック・シーガル。彼もハーバード大学出身で33歳の若さでイェール大学の教授になったエリートでした。映画は原作と同時進行でつくられ、当時、ベトナム戦争で疲弊したアメリカの若者たちの間で、哀愁あふれる映画音楽とともに大ヒットしました。
日本でも角川が版権を取得、大ヒットした作品であり、小説もでています。
映画はアマゾンprimeビデオでレンタルできます。
ちなみに、続編『続・ある愛の物語』はお勧めできないです。