【結婚と毒親 8】ホラー映画と病院が大の苦手。そんな私に襲いかかる恐怖の時間
《オババ》私の姑、ディズニーオタク。
《叔母》ヒステリー性障害を患う。娘を溺愛し結婚に反対するオババの妹。
《優ちゃん》叔母のひとり娘。39歳。婚活アプリで知り合った太郎と熱愛中。
《太郎》35歳。高校時代に親を亡くし、一人で農家を切り盛する中卒の勤労青年。
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どうやって、病院から逃げようか?
脱走したいです、大脱走したいです。
なんなら、床に穴ほってでも逃げたいって妄想していたら、ふと米国ドラマ『プリズンブレイク』が思い浮かびました。
主役の天才マイケルが理知的で頼り甲斐があり。どうも、私、こういう理系タイプの知略で物事をすすめるタイプに昔から弱いようです。
諸葛孔明とか、シャーロックとか・・・。
『プリズンブレイク』はシーズン1から超がつくほど大ヒットしましたね。最後まで見ずには終われないノンストップサスペンスドラマでした。
なんとFOXでシーズン6の企画が進行中だそうです。
いやあ、シーズン4で死んだはずのマイケルが生きていたって、もうむちゃくちゃアカンやろの設定で、シーズン5を乗り切ったFOXだから。
シーズン5で完璧な終わりかたをしても、さらに、新シーズンでって、それもう刑務所破る以上に、オキテ破りだけど。ま、一回、生き返っているから、それもアリ? で、マイケル。その前に私を脱走させてみない、その豪腕で。
ただいま、私、病院からの脱走計画をお願いしたく、マイケル緊急募集中であります。
それにしても、病院の壁って、どこもかしこも、なぜ白なんでしょうかね。
白、しろ、シロ、これしか考えられないんかって、そういう潔い白。
夜は蛍光灯が、その白を青白く浮き立たせていて、謎の不気味ささえ醸し出してくるから。
ほら、ホラー物って病院が舞台だと怖さ増さない?
学校や廃屋も、いい勝負しているけど、やはり病院がね。
ホラー的には一番な気がする。
そもそも入院して、いいことってないから。
まず、病院に行くときって健康じゃないし、体が辛いのに、検査で、やたらあちこち移動しなきゃならないし、注射して、レントゲン撮影してって、挙句の果てには尿まで欲しがるし。
「じゃ、次はこのカードもって、あっちの検査室ね」
もう病人だからって全く甘えが存在しない。
人使いが荒いっちゃ、これほど荒い場所もないから。よほど注意してないと、ついでに胃の検査も加えておきましょうかって、胃カメラ飲まされて、もうちょっとで窒息死かってほど攻めてくる。
その結果がなんだと思う。
「特別に問題ないようですね。まあ、疲労からくる体調不良でしょう、一応、抗生物質だしておきますから」って、クールに医者は決めたつもりだろうが、こんなに荒々しい扱いをして、一言って、それでいいわけ?
もうちょっとね、ねぎらいの言葉とかあっても良いと思うのですが。
「いやあ、今回の血液、なかなかいい出来でした。血液のフレッシュさがね、お年のわりには綺麗で。それから、そうですね、タンパクに含まれているアルブミンも、いい感じ出してますよ、もう血液でモデルにでもなっていただいても・・・」とか、あって欲しい。
検査結果で出た数値、グーグルでちょっと検索すれば、いくらでも答えがでてくる。google病院なめてもらっちゃ困るけど、そこはお金はらってまで、病院に来てるんだから。グーグルのお世話はさせないって、そんくらいの気概でもって、説明してほしいわ!
というわけで、アメリッシュ、最も苦手な場所が病院なんです。
いい思い出なんて、一つもないから。
叔母は救急でできる検査を一通り終えて、
「どうしますか?今日のところは一晩、病院で過ごしますか?」なんて言われているところで、優ちゃんと私は診察室から廊下に出て、ソファに座った。
太郎くん、そこへ来たわけです。少しも疲れた顔をせずに。
「あ、太郎さん!」
ささやくように優ちゃんが声を発し、いきなりピンク色の花が舞いました。
真っ白な病院がピンク色に染まり、
恋愛ドラマなら、じゃあ、ここスローモーションで行こうかって場面になったんです。病院と恋愛。この二つもホラーと病院に匹敵する定番メニューじゃないかと思っていると。
太郎くん、優ちゃんを認め、心配そうな顔から、満面の笑顔。もうとんでもなく嬉しそうな表情をうかべ、
こちら側では、立ち上がった優ちゃんのスカートが、ひらひらと舞い上がったりして。
完全に二人だけって雰囲気で、世界をまとめています。
私、カメラマン役になるしか、他にすることなくて、
はい、カメラさん、ここワンカットで、そうそう、一瞬、ストップ!
さあ、ここでレンズ引いてぇ、ズームイン、ズームイン、二人の全身の姿捉える! よっし!
ミュージック、スタート!
走りよる二人って展開って、カメラ回していた。
いつものように、優ちゃん、ちょっとつんのめって、太郎くん、もうわかっているのか咄嗟のスライディング。
生き別れの恋人同士が、やっと会えたって、そんなシーンで抱き合っている。
帰ろう!
もう、ぜったい、今すぐ帰る!
ソファから立ち上がろうとした。必死にした。しかし、立ち上がれない。
なぜ?
オババァーーー!
いつのまにそこにいた!
そして、私の夏用ジャケットを捕まえている。
私、にっこりしました。
オババも、にっこりしてます。
顔がフリーザさまで、にっこりしています。
to be continued
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ーヒステリー性障害(別名、解離性障害)ー
あまりに身近にいて、わりと有名な病気なのかと思っていましたが。そうでもなかったようなので、適当な説明ですが・・・。
ヒステリー性障害とは心因性の精神障害に分類され、身体的機能が意識から乖離(カイリ)してしまう病気です。頭が体をコントロールできない状態で、体に問題がないにも関わらず、麻痺やけいれん、気絶など、雑多な身体的症状を呈します。
背後には解決困難な問題や対人関係などが隠れていますが、本人はそれを理解せず、病気だと思っているケースが多く。実際、卒倒するなど、ひどい状態なので、病気であると周囲も誤解するわけです。
心の奥深くに巣食った不安が、ある状況で、そうした疾患を引き起こすようです。厄介です。周囲のものは非常に厄介な思いをします。