【結婚と毒親 7】共感する余裕なんてな、回数制限あるって知らなかった?
《オババ》私の姑、ディズニーオタク。
《叔母》ひとり娘をこよなく愛する優しすぎる叔母、娘の結婚に反対するオババの妹。
《優ちゃん》叔母のひとり娘。39歳。婚活アプリで知り合った太郎と熱愛中。
《太郎》35歳。高校時代に親を亡くし、一人で農家を切り盛する中卒の勤労青年。
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オババの家と叔母の家は、私の家を頂点としたら、おおよそ二等辺三角形を形成しています。
別名、魔の二等辺三角地帯。バミューダトライアングルとも呼んでいて。
頂点の位置が私で、だから、わかってもらえる?
私が一番遠いんです。
グーグルマップで距離感見て描いてみたんです。こんな感じなんで、遠いってのはグーグルさんの保証付。
でも、優ちゃん、まったく悪びれずに、叔母が救急病院に運ばれたって連絡してきました。
なあ、優こりん。
39歳って年齢は、世間一般じゃあ大人の部類なんだ。
誰も青春なんて言葉、39歳には言わないし、言えない。
サラリーマンなら、オレ、そろそろ課長になってもいいじゃねって。
出世街道の動向が気になる年齢で。
婚活していれば、崖っぷちから生還するの諦めよかって。もう、諦観するよなってな年で。
人生、折り返しターンの時期だから。
いつでもどこでもアメリッシュって。
私を呼ぶのやめようよ。
呼ばれたら行くしかないから、それが大人だから、浮世の義理に縛られるのが大人なんだよ。
そこを察してみるのも大人なんだ。
優ちゃんは叔母さんの卒倒って、どういう意味か理解してるじゃないかい?
私、オババから聞いたよ。
優しく心配性の叔母さんの闇の姿。ディズニーでもちらっと経験した。
いきなり叫びだしたときは、ぎょっとした。
叔母さんはヒステリー性障害だって。
普段はとても愛想がよくて、周囲からは、いい人と言われてるけど、つねに自分の心のなかで空回りしてからの、怒りの発露。体の病気ではなく、心の問題で卒倒したりするんだって。
本人には自覚がなく、救急に搬送されたこと何度もあって、その際に検査しても、特に身体的な異常はないってこと。
そういえば仕事で関係した人、最初は、とてもいい感じで、すがりつくように
「もう、アメリッシュさんって優しい」とか言ってくるんですが、ある日、ふいに豹変したりするんで、あからさまにプイって態度になってきて、理由がわからなくて混乱する。それからまた、態度が変わって
「あのね」と寄ってくることの繰り替えし。
どこにも厄介なヒステリー症候群がいるんです世の中に。
振り回されるこっちが辛いから。
それが叔母さんなんです。
私だって忙しい毎日があって。ブログだって書いてんだぞ。というか、あんたを餌にしちまったぞ。ぜったい読むなよ。読まれないよう、フェイクいれてっから、気づかないだろうけど。
優ちゃんの電話口での声は、特に悪びれる様子もなくて・・・
「ママ、が倒れて、今、救急病院なの」
おそらく恐ろしいことに、その電話、オババにしてる。
そして、きっと、更に恐ろしいことに、太郎くんにもしてる。
病院の救急病棟で、ついでの緊急家族会議って展開、ありえないから。もう、ないから。
これでも、アメリッシュ、料理とか掃除とか、それほど得意じゃないけど、一応は毎日やっていて、優ちゃんを私のレベルまで引き上げるなら、できるかもって。特訓するかって、かるーく計画立てていた。
はなちゃん(id:hananekochang)さん達や他のブロガーさん達のアートなお弁当で勉強してっからな、今でも。
それが、いきなりの全員集合。
ちいと状況を考えんかい。
リストバンドつけて点滴つけて、カテーテルしたまま、叔母さんも参加するって地獄をみっぞ。
もう、ほんとに顔をしかめて、運転しましたよ。
ナビに教えられた救急病院の名前いれて、救急車みたいに、うーーうーー、口で唸りながら。
病院に到着すると、同じ頃にオババも到着しました。
オババのほうが近くに住んでいるのに遅かった。いつものことって顔つきで、まったく慌てた様子もありません。
やはり、そうだよねって。
気の毒なのは太郎くん。
一番の遠距離なのに、きっと必死で疲れた体に鞭打って、農作業って、そんな簡単に出てくることできないはずだろうに、きっと必死で運転しているんだろうな。
太郎くん、いっそ詐欺師であってくれたほうが、気持ち的には楽だったよ。
結婚詐欺師だったら、
いやー、イトコがね、義理のイトコなんだけど、夫のね。
そのイトコが、もうなんだか結婚詐欺にあっちまって、なんて後からみんなに話して。それで、うわー大変だったんだねって、ちょっとだけ盛った私の武勇伝を聞いた人々と大騒ぎして、それでお開きみたいな展開、むしろ、そのほうが良かった。
なんなら詐欺師・太郎に、刀じゃないけど、なんかそういう武器、竹箒でも、ちょっと振り回して、夏目雅子さんばりに、
「鬼龍院政五郎の娘やき、なめたらいかんぜよ」
なんて、冷たい目で決めてみたかった。
それが、今、白い巨塔みたいな場所で、プロフェッショナルなお医者さんとか看護婦さん相手に、「そうですか」って、オババの隣で、うなずく役って。
叔母の普段の血圧やら、既往歴やら、そんなこと知らんがな。
知りたくもないがな。
「ええ、そうなんですよ。これまでの病歴でいえば、盲腸と、それからなんでしたっけ、そうそう、痔を少々」
痔を少々って、オババ、マジか!
趣味のお話か、お花を少々って、そういう話か。
お医者さまも下を向いてる。肩が、一瞬震えたの、見逃さなかったから。
なんてのどかな救急だよ。
診察室のドアの前に、長い無機質なソファがあったんだけど、
そこで待っている間も、あきらかに酔っ払って意識を失った男を、奥さんらしい女性が、ものすごく疲れた顔をして付き添っているし、 その隣では、母親と一緒に小さいな子が口に体温計入れてるし。
もう、なんていうの?
ERのドラマにあるような、切羽詰まった緊急救命室って、そんな雰囲気じゃない。
「気道確保! 血圧100から50に下がってます!」って。
すごい勢いでストレッチャーが運ばれてくる、そんな緊迫感ないから。
血を大量に流した患者の横を、家族が
「あなた!あなた!」
「奥さん、ちょっと離れて!!」
って、そんな場面、どこにもないから。
壁際でナイフ持った愛人が伺ってなんて、ドラマチックな展開もなさそうで・・・、
小さい子が体温計が挟まった口を必死に見ようとしているくらいの緊張感で。
こんなものなの?
夜の救急って。たまたま緊急の患者さんが少なかったの?
まあ、その夜は、お医者さんの説明を聞いて、一通りの血液検査なんかして、叔母は腕に点滴つけて横になっているけど、集まった誰よりも顔色がいいから。
優ちゃん。もう大人なんだ。この程度のこと、自分だけで対応できる。
39歳って、そういう年齢なんだよ。
結婚って、そういうことを難なくこなしていくことで、
彼、そういう優ちゃんを知っても結婚するって言っている。
今は・・・。
でもな、太郎くんは、そのうちに理解して、そうしたら、どうすんの?
叔母さんみたく気絶して引きとめっか?
それ、究極の卑怯だから!
もう最後の砦なんだよ、現状は。アラモ砦でメキシコ軍相手に全員玉砕してしまうような、そんなセッパ詰まった状況だって、そういう認識皆無なんだよね。
残念を通りこして、イタいぞ!
ああもう、本当に言いたい。
「なめたらいかんぜよ!」