「つぼ、壺、ツボ、つぼ、壺」
「いったい、つぼつぼと何を呟いている」
「壺、壺が欲しい!! 壺がぁ〜〜。アメリッシュガーデンに足りないもの。それは、フォーカルポイントです」
「また、なにかに毒されておるようだな」
「とんでもない、我が道を行く女でござい」
「残念だが、そこんところは、まるっとお見通しだ。『私にとって庭づくりは、木や草花を利用した絵画づくりである』というチャールズ皇太子のインタビューを吉谷圭子さんという著名なガーデナーが講座で言っておられたというのを、知り合いから聞いた。というところであろう」
「す、すばらしい! まさしくその通り。一部の隙もありません。しかし、なぜにそれほどまで詳しくご存知で」
「その知り合いは、私の知り合いでもあるからだ。そして、先日、同じ話を聞いた。そのとき、ふと、ある人物の物欲しげで、その上に間抜けな顔が思い浮かんだ」
侮りがたし悪友。
フォーカルポイントを設け、庭を美しくデザインするという記事はよく見かけます。視線を集める特徴のある壺や高価なガーデンファニチャー などをフォーカルポイントにする、いわば庭造りのテクニックです。しかし、これが、ちとお高い。ガーデン造りに散財したものにとって、数万円のツボや数十万のファニチャーは痛すぎる。
青く塗ったフェンスに100円ショップで購入した額縁を飾りましたが、その下の地面にテラコッタの壺を置くと、俄然、チャールズ皇太子のいうピクチャレスなシーンになると考えたのです。
「実はとっておきの方法がある」
「そのとっておきの方法とは」
「まあ、高価な壺ほどの存在感はないが、それなりの方法というか」
「トーンが下がっておりますが、師匠」
「まずはホームセンターに走れ」
テラコッタ風の穴あきブロックです。ホームセンターなどの園芸店で500円ほどで山積みされている、あれです。
これを2個と言われ購入しました。ブロック2つを、ただ上下に乗せればいいという師匠の話です。乗せるだけでも良いのですが、さらにアイディアを膨らませた私。本来なら、モルタルを使えばいいのですが、そこは無類の怠け者。100円ショップで白い粘土を発見して、はっと気づいたのです。粘土、モルタルに似ています。粘土を上下のブロックの間につめ、上に蓋をすれば、フォーカルポントとして結構いい感じになりました。
「なかなか、いい出来です。師匠」
「私、失敗しないので」
ドクターXか。