チャールズ皇太子の庭に憧れて その2
「チャールズ皇太子のインタビューだけどね」
悪友Yが家を訪ねてきました。どうも庭の偵察に来たようで、早々に、ブロ友レンセンカさん受け売りのモヒートを作って酔わせておきました。美味しかったのか、お代わりを要求されています。
「それで? インタビューとは?」
カチャカチャ・・・、炭酸水を混ぜている擬音語。
「まあ、内容を端折って言うと、『庭とはピクチャレスなもの』になる」
「また、思いっきりよく、ばっさりと端折ったな」
「皇太子のインタビューを、日本の著名なガーデナー吉谷圭子氏が講演していたのを知り合いから聞いて、ネットで皇太子のイングリッシュガーデンってなんぞや? と調べた結果を言っている」
少し酔っているから回りくどくなっています。すみません。
話は飛びますが、酔っ払いのおじさんたちって、なぜ、よく謝るのでしょうか。例えば銀座から新橋駅に至る道に通りかかると、呂律の回らない「しゅみませーん」という声が、よく聞こえてくるのです。自宅で待つ家族に、新橋から謝りはじめているようで、なんとなく微笑ましいというか、はよ、帰れよというか。
「肝心のインタビュー内容が薄いわりに、探す過程の説明が長いな」
「で、私、悟ったのであります」
「聞こう」
「イングリッシュガーデンは、もう古い」
「どこで、どういう迂回をしたら、その結論が導かれる」
「数学的演繹法とでも申しましょう」
「その言葉、理解して使っているのか」
「いえ、ただ、なんとなく聞きかじった言葉で」
「え?」
「知らずに使ったか」
「まあ、そこは置いておいて」
「最初から置いておいたほうが良かったと思う」
閑話休題。
「師匠、まず狭い庭でイングリッシュガーデンを目指すのは、非常に無理があったと気づきました」
「つまり、自分の庭でできないなら、それはもう古いと」
「で、あります。もう古いと思考を転換すれば、つまりは、目指す必要はないという結論に達する」
「確かに、その考え方は、ある意味、数学的帰納法だ」
「フォーカルポイントは庭に作った。あとは、どうピクチャレスに、その場面を彩るかが問題で」
「まだ、イングリッシュガーデンの尻尾が残っているような気がする」
「当然です。あれは英国の長い伝統から培われたガーデン文化。おいそれと古いとだけで切り捨てることができようものではありません」
「話が見えないのだが、酔っているのだろうか」
「師匠は最近のガーデン動向をご存知か」
「誰に話しておる」
「では、当然、いま流行しているジャンクガーデンという言葉を知っていると」
「ま、まあな」
言葉が泳ぎ、鼻をぴくぴくさせはじめた。
「つまり、こういうことです。狭い庭とジャンクガーデンをミックスさせて邪道イングリッシュガーデンでピクチャレスな空間を作ろうと奮闘したのです」
ジャンクとは古びたもの。穴あきブロックでフォーカルポイントを作り、さらにピクチャレスなコーナーにするため、家中を漁りました。古びたモノをアチコチから引きずりだして飾ったのです。
という訳から、二人で庭のコーナーによろめきでました。
「美しいではないか」
「美しいです」
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