《オババ》私の姑、ディズニーオタク。姪っ子が結婚詐欺にあっていると誤解していた。
《叔母》ひとり娘をこよなく愛する優しすぎる叔母、娘の結婚に大反対のオババの妹。
《優ちゃん》叔母のひとり娘。39歳。婚活アプリで知り合った太郎と熱愛中。
《太郎》35歳。高校時代に親を亡くし、一人で農家を切り盛する中卒の勤労青年。
ディズニーランドから戻った翌朝のこと。
午前4時。
私、激痛で飛び起きました。
もう痛いのなんのって、口から泡吹いて、涙うかべて悶絶!
足がつってんの!
あまりの痛みに、ウっとも出ない。こむら返り、それも両足まとめて!
片足だけでも激痛なのに、両足まとめてって。
まとめを間違っている、私の足!
まとめるってのは、考えとか、本とか、貿易問題とか、そういうものをまとめるわけで、足ではないって。
そこは、生真面目に対処してもらわないと。
日頃の運動不足がって、そんなこと、今、言ったらシメ殺す!
ベッドで七転八倒、転げ回って、声も出せず。
そのまま、ベッド下へ転げ落ち、そいでもって腰を打って。
ぎやあああああああ・・・!
なんで神様って思いましたよ。
そりゃ、ないって。
だってさ、行きたくもないのに、朝から夜まで従姉妹のディズニーデートに付き合うって。
娘のデートを母親から守るって。
本来なら、逆って話です。
娘を男から守ってナンボの話が、なぜ、母から娘を守らにゃならん!
もう、叔母さん!
毒親認定しますから。
私の激痛こむら返りも叔母さんって、逆恨みがゴジラ並みですから。
口から火ふいてますから、いま!
しかし、痛い!
お、親指が、あ、足のつけ根がってんで呻いていて。
つったときに足の親指を掴んで、体に引き寄せ、
ぐっと反らすと楽になるんです。
おそらく、筋肉の収縮がそれで治るのかもしれませぬ。
でも、今は、腰が痛くて曲げられない。
親指がどれだけ遠かったか、もうエベレスト最高峰かってくらい、手が親指に届かない。
打った腰も痛むけど、トリアージュ的には後回しになってた。
トリアージュって、あれね。
『コード・ブルー・ドクターヘリ緊急救命』の災害現場で、医師たちが治療の優先順位をつけるため、タグつけて決めてた、あれ。
でもって、わたし、ひとりトリアージュ。
両足が緊急で赤タグ、腰の痛みには黄タグを貼った。
第二の心臓って呼ばれるふくらはぎの痙攣って、もう底意地が悪いほど痛い。
『カバディ、カバディと叫び続けるのがルールだった?』って、開物発事(id:Kaimotu_Hatuji)さん。
そうです。そういうルールなんです。腰を下ろして横っ飛びに小刻みジャンプ、攻撃側が「カバディカバディ」って叫ぶ、究極の鬼ごっこです。
ディズニーのホーンテッドマンションからイッツスモールワールドまでカバディしての、その結果がこむら返し。
今、むちゃくちゃ後悔しています。
カバディ!
とかなんとかの数日後、優ちゃんが訪ねてきたのは、こむら返りの絶妙のタイミングというか、まあ、激痛を忘れた頃に、太郎くんの手紙を受け取ったのです。のどもと過ぎれば熱さを忘れるって、間抜けにも受け取っちまったんであります。
長い手紙だと思いました。
これまでの生い立ちから、親のこと、自分のこと、仕事のこと、将来のこと
家族が知りたいことはいっぱいあります。
手紙を書くって行為も好感が持てました。いい考えだと。
で、その内容が、これです。
・
・
・
『拝啓
優さんと結婚させてください。
敬具』
え?
ええ?
こ、これだけ?
この内容では、実母どころか、その姉のオババでさえ突破できん!
高校を中途退学し、ただ一人で畑を耕し、ひたすら働いてきた。
それはわかるよ。実直な人柄も出ていた。醸し出していた。
あの労働者の手を見ればわかる。
がな、太郎よ。
おそらく本を読むのが嫌いなんだろう。
字を書くのもな。
優ちゃんが直接オババのところへ行かなかった理由を察してしまったよ。
これで叔母を説得できるなら、どんな交渉だって楽勝だろう。
金正恩だって花束もってやってくる。
お、重い! 重すぎる。
私、頭を抱えました。
to be continued