アメリッシュガーデン改

姑オババと私の物語をブログでつづり、ちいさなガーデンに・・・、な〜〜んて頑張ってます

【ホラー小説】今日は優しく穏やかな一日。トルネコと少年と少女と・・・

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おひさしぶりです、アメリッシュです。

 

ちょっとの間、ブログから離れていた。離れていたら、そのまま消てしまいそうになって、それは、ちょっとだけ悲しいって思った。

そう思ったら、矢も盾もたまらず書きはじめていた。

 

そんな自分、けっこう愛おしいから、

それで良いんだ、なんて思ったわけ。

誰もが、そう自分のことを思えれば、嫉みなんて減るかもしれない。

 

だって、

私たちって、けっこういい人だと思う。

たぶん、そう・・・

けっこう、みんないい人なんだ。

 

今日は、昨日の激しい雨が通り過ぎ、穏やかな一日で、

通り抜けていく風も優しい。

 

昨日、私は夕刻から買い物に出かけた。

新型コロナウィルスの蔓延から買い物時間を変えていて、

夕刻はスーパーの人も少ないから。

 

でも雨混じりの風が思いのほか強い日だった。

あまりに風が強くて吹き飛ばされそうになってびっくりした。

なんとか無事に家にたどり着いたときは、やつれた冒険者みたいで・・・

 

大きな荷物を背負ったトルネコみたい。

玄関先で鏡に映った自分の姿をみて爆笑していた。

 

ああ、まるでドラクエトルネコみたいだって。

 

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ドラクエ、荷物を背負った冒険者トルネコ

© 2019 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.

 

それも疲れはてたトルネコ

毛は逆立ち、荷物が多かったので傘をさせなかったために、

雨に濡れた服が身体にまといついて。

埃にまみれ濡れそぼったトルネコだ。

 

今日は昨日の荒天が嘘のように穏やかな日になった。

 

なぜか、こういう穏やかな天候が少なくなった気がする。

昔は、もっと穏やかな日が多かったように思える。

穏やかで、ずっと優しかったような気がする。

 

そんなことを考えながら、このブログを書いてて。

 

昼下がり、パソコン前の窓を開けていると、近所の人の声が聞こえてきた。

 

今日は少しとんがった声が聞こえる。

その声は興奮したようにも、怒ったようにも感じる声で、

それは母親のようだけど、実際は怒っているんじゃない。ただ、小さな子にお母さんが注意しているだけなんだ。

 

「ほら、もういい加減にしなさい。遊んでないで、手伝って!」

「ふふふ」

「だってね」

「ねぇ〜〜」

 

声は風にのって飛んでくる。

 

でも、この周囲に小さな子なんていたんだろうか?

 

近所の子どもたちは、いつの間にか大きくなって、いつのまにかちょっと大人顔をして歩くようになっている。

 

周囲の家に小さな子はいない・・・、と思う。

 

不思議に思って、ちょっとした気まぐれから外に出ると、

ふいに子どもたちが、こちらに向かって走ってきた。

 

少年と少女のふたり連れは双子のように似ていた。

彼らは前方から駆けてきて、風を起こして通り抜ける。

 

少女が叫ぶ!

「こっち、こっち」

小さな身体で少年は、少女のあとをおぼつかない足取りで後を追う。

「待って、待ってよ!」

 

風を追って疾走する姿は不思議なほど現実味がない・・・

 

子どもたちは昭和初期のような、珍しい格好をしていたからだ。

おかっぱ頭の女の子に、刈り上げた髪型の男の子。

いまどき、風流な、いっそ新鮮に感じる姿形で、私は思わず微笑みをうかべた。

 

黄色いチェックのちんちくりんのシャツにヒダスカートをはいた少女と、

少し大きめのダブダブのズボンをはいた少年。

 

いくつくらいだろうか。まだ、学校へ上がる前にちがいない。

 

ふたりは大声で笑い、それから、こちらをチラっと見た。

 

はじめてこちらを振り向いた顔は、どこかで見たようななつかしさを感じた。

 

どこかできっと会っている。

それも家の近くじゃない、ずっと遠くのどこかで。

 

彼らはやせ細っていた。

満足に食事をしていないのだろうか。

 

それでも、笑いながら駆けていく。

 

と、空で轟音が満ち、低空飛行する飛行機が高度を下げた。

防空サイレンが鳴り響いている。

 

「戻ってらっしゃい!」

母親が悲痛な声で叫ぶ。

 

その声に、少女は立ち止まり、少年は聞こうとしなかった。

姉を追い越した少年は得意げに背後を振り返った。

 

爆音がした。

 

少年のいた位置に火柱が立ち、そして、少女の顔が硬直した。

彼女の先には真っ黒に焦げた穴しか残っていない。

少年は消えた。

 

少女は一瞬で大人の顔になり、私を見た。

 

一陣の風が吹き抜け・・・

 

少女の姿は風にゆらぎ、それから、すぅっと消えた。

 

後には風の音しか聞こえてこない、

美しい、初夏の香りが樹木から漂い、かたわらを過ぎて、去っていく。

 

・・・今日は沖縄戦から75年「慰霊の日」

 

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