アメリッシュガーデン改

姑オババと私の物語をブログでつづり、ちいさなディズニーランドに・・・、な〜〜んて頑張ってます

暴風雨がきても誰も教えてくれない。情報がない世界で生きるということ【明智光秀と織田信長/再5】映画『7人の侍』

(前回のあらすじ:1573年、戦国時代に転生した私の姑オババとアメリッシュ。アバターとなった戦国時代の母娘を生かすため兵隊になる決意をした。私は足軽として雇われボスである小頭古川久兵衛と共に密偵として敵のいる小谷城に入り込んだ

 

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一乗谷の町、復元:戦国時代の城下町

戦国時代、嵐の闇

 

天生元年8月12日(1573年)。

近江地方、現在の琵琶湖周辺を暴風雨が襲った。

 

ヒューヒューと不気味に唸る風・・・

ガタガタと建物自体が揺れる兵屯所。

人々は建物にこもり、嵐の到来を告げる不気味な音をやり過ごすため、

歯をくいしばって・・・

 

へ?

へえ?

へえええええ・・・?

 

誰も気にしてないし!

 

閉じた板戸がバタバタなり、時折、雨粒さえ降り込んでくるけど、みんな、のんびり寝てる。ゴロ寝してる。

薄暗くなってから、さらに風雨の勢いが増したけど、怖くないの?

これが現代なら、至れり尽くせりなんだからね。みんな、むちゃくちゃ怖がっているからね。

 

だってね、戦国時代に生きる人たちよ。

21世紀なら、テレビニュースからネットニュースまで台風や熱帯低気圧が到来したら、それこそ情報であふれるから。

赤ちゃん台風が、どっかの遠い南の海で生まれた瞬間に、すでに、何日に日本近辺に到着するって予想くれる。

ヘクトパスカル教えてくれる。

どんな規模の台風で、以前にどんな被害があったかなんて、詳細な情報が出てきて、さらに自治体なんか、ニュースだけじゃ足りないとばかりに、聞こえにくい騒音でアナウンスしてくれるんだよ。

 

「みぃなぁさま、台風がぁ、ちぃかぁづぅいてぇおりぃいまぁすぅ」

 

なんて、母音まで発音して、少なくとも3回はアナウンスしてる。でもって、なに言ってるか、集中しても聞き取れないけど。

避難場所も提供されて、日本に住む人全員が、戦国時代の皇族や貴族、大名よりも、大切にされてっぞ。

 

それがどうだ。

風が強くなってきてるけど、なんのアナウンスもない。

せめて、鐘でも鳴らしたらどうだろうか・・・

で、誰もが寝てる。

平和にすーすー寝息を立ててる。

 

いや、確かに生活は厳しい。なんでもかんでも自分たちで用意しなければならない時代だから、衣服だって買える人はほとんどいないから。買う場所も少ないし、というか、流通が整えられてないんだ。

関所が多くて、その国を収める輩が勝手気ままに租税をとる、そんな悪代官ばかりで、商品が流通できないから。

越後屋、ウヒヒッ」って声、聞こえてきそうだから。

 

だから、庶民の衣服なんて、自分で麻や綿花などをしごいて糸からつくり、それをハタ織り機でおってと、現代人なら丁寧な暮らしなんて言われそうなところ。もうね究極の手作りだから、手作り感、半端ない!

洗濯も、井戸で水を汲んで足でもみ洗いして、それを干して、破れは自分で繕うって生活。暇なんてないから、そりゃ、なにもできない夜は寝るしかない。娯楽もないし、生活で疲れ切ってるもの。

なんなら、あっと思ったときのコンビニもないし。

まさか、自分がコンビニ弁当を夢見るなんて思いもよらなかった。

現代人は機械仕掛けの便利な生活で、時間という贅沢な余裕を得たんだって、ものすごく思った。

そして、男も女も、不安に悩む前に疲れていた。いっそ捨て鉢なんだと思った。

 

嵐の中を

 

久兵衛、ちょっと」

ごろ寝している兵たちから久兵衛を探して声をかけた。

外は厚い雷雲のせいで薄暗い。

「なんだ、アメ」

「いや、マチだから」

「アメとマチ、どっちが本当なんだ」

そんなことは私にもわからない。

少なくとも、21世紀ならアメリッシュとして生きているけど、戦国時代で、マチの体を使っている私は、もうね、自分がなんなのかさえ定かでなくなりつつあって。

このままマチというアバターに同化するんじゃないかって、ちょっと恐れている。

「いくよ」と、彼の耳元で囁いた。

怪訝な顔つきで久兵衛は私をみて、それから何も言わずに装備を整えた。

兵屯所の板戸は湿り気を帯びて開けにくい。普段より重い戸をガタガタと音を立てて強引に開いた。同時に、突風が部屋に走りこむ。

「誰だ! 扉を開けんなや!!」

しゃがれた怒鳴り声がしたが、それだけで他にない。

室内の灯りはないので、叫んだ相手が誰かもわからなかった。

「おい、こんな雨のなかを行くのか」と、久兵衛が聞いた。

「行く」

「なにがあるんだ」

「ある・・・、と思う。確信はないけど」

「そうか」

久兵衛の決断は早い。

雨笠を被り、槍を背負うと、「どこへ行く」と聞いた。

「大嶽砦よ」

「大嶽砦? そこで、なにが起きるというのだな」

「うん、ここは、間違いなく朝倉兵の一部が砦を守っている」

「ああ、知っておるぞ。昨日、ちょっと見てきた。大嶽砦を攻略されると小谷城の浅井は孤立するからな」

私は、ひときわ声を落として、久兵衛の耳元で言った。

「そう、そうなんだ。だから、織田軍が動く」

「誠か!」

「動く。信長が若いころに桶狭間で今川を破ったのは、豪雨のなかで奇襲したからだ。だから、もう一度、やる」

久兵衛が、藁(わら)でできたスカートのようなものをくれた。

「なにこれ?」

「巫女殿、いろいろな事を知っているが、しかし、こういう普通のことを何にも知らんな。誰でも知ってるようなことを知らん。どこの姫として育ったんだ」

彼はフッと笑って、それから、腰蓑を巻きつけてくれた。

「雨が強い、笠も被っていけ」

「あ、ありがとう」

雨風をしのげる軒下で彼は目を細め、それから、「よし」と言った。

「昨日のうちに抜け道を探しておいた。ついてこい。まあ、この雨だ。見張りもみてないだろうがな」

確かに、この砦の士気は低い。大方の雑兵は、いつ逃げ出すかなんてことを、ひそひそ話していた。浅井家に対する帰属意識は低く、非常にドライだと感じている。

映画「のぼうの城」で描かれた忍城の民は、領主を慕い、秀吉に攻められたときも領主のために必死になって戦ったというが、ここには、そういう気配は微塵もないんだ。

負け戦を見据え、今後をどうするかって話ばかりが聞こえてきた。

現代なら倒産しそうな赤字企業に勤める社員の様子。それに似ているなんてこと思った。

 

大嶽砦は小谷城を見下ろす山の頂上にあり、500mほどの高さに建つ山城だった。

敵が隠れることを恐れ、小谷山ははげ山になっていた。だから城下町から大嶽砦まで雑草くらいしか生えていない。普段なら隠れる木もないが、暴風雨のうえに夜だから、誰かに見咎められことはないだろう。私の記憶では、信長もそのチャンスに賭けたはずだ。

 

久兵衛は確かな足取りで清水谷の町を抜け、山を登っていく。

その背をみながら、私は後につづいた。

私がアバターになったマチの体は小さい。風に体をもっていかれそうなほどだが、しかし、私と違い筋肉質で鍛え、いや、当時として、この体は鍛えたのではなく普通なんだ。毎日の生活がジム通いよりキツイんだから。

だから、この世界を見て思う。

便利な現代人の多くは肥満を抱え、やることを見つけられずにウツ病に悩む。戦国時代の庶民にそれは贅沢の極みだと思う。肥満するほどの食料もなく、生活に終われ悩む時間もない。目の前の難事をただ乗り切るだけの日々だった。

 

風は、さらに強くなったが、マチの体は耐えた。

「アメ! ほんとに雨女だな」と、久兵衛が振り返って叫んだ。

返事をする気もなかった。

この先に信長がいる。

期待と恐怖で、私はこわばっていた。

「こりゃ、ひでえぞ。本降りだぞ。ほんとに来ているのか、織田軍は」

「きてる!」

「巫女殿がそこまで言うならな」

大嶽砦は、今日、陥ちる。間違いないとは確信していたが、それでも、もし違ったら、一抹の不安を感じてもいた。

「大嶽砦の方向に間違いなく登っているか?」と久兵衛に叫んだ。

「ともかく上に登る、頂点にある砦だ。上に行けばいいだろう」

「そ、そうか」

そのうち、話すことも苦痛になった。

遭難なんてことを、思わず考えた。だからといって、遭難救助隊なんて来ないことはわかっている。

現代の先進国の人間は多くのことで、国に守られている。

気づかないだけなんだ。

戦国時代はサバイバルだ。運が悪くても、弱くても、死ぬ。

 

オババ、ごめん!

ふと、その言葉が心に浮かんだ。

 

・・・つづく

 

登場人物

オババ:私の姑。カネという1573年農民の40代のアバターとして戦国時代に転生

私:アメリッシュ。マチという1573年農民の20代のアバターとして戦国時代に転生

トミ:1573年に生きる農民生まれ。明智光秀に仕える鉄砲足軽ホ隊の頭

ハマ:13歳の子ども鉄砲足軽ホ隊

カズ:心優しく大人しい鉄砲足軽ホ隊。19歳

ヨシ:貧しい元士族の織田に滅ぼされた家の娘。鉄砲足軽ホ隊

テン:ナイフ剣技に優れた美しい謎の女。鉄砲足軽ホ隊

古川久兵衛足軽小頭(鉄砲足軽隊小頭)。鉄砲足軽ホ隊を配下にした明智光秀の家来

 

*内容は歴史的事実を元にしたフィクションです。

*歴史上の登場人物の年齢については不詳なことが多く、一般的に流通している年齢などで書いています。

*歴史的内容については、一応、持っている資料などで確認していますが、間違っていましたらごめんなさい。

 

参考資料:#『信長公記太田牛一著#『日本史』ルイス・フロイス著#『惟任退治記』大村由己著#『軍事の日本史』本郷和人著#『黄金の日本史』加藤廣著#『日本史のツボ』本郷和人著#『歴史の見かた』和歌森太郎著#グーグル検索#『村上海賊の娘』和田竜著#『信長』坂口安吾著#『日本の歴史』杉山博著#『雑兵足軽たちの戦い』東郷隆著#『骨が語る日本史』鈴木尚著(馬場悠男解説)#『雑賀の女鉄砲撃ち』佐藤恵秋著#『夜這いの民俗学赤松啓介著#「足踏み洗い」から「手揉み洗い」へ―洗濯方法の変化に関する試論― 斉藤研一 藤原良章・五味文彦 編ほか多数

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映画『7人の侍』

映画『7人の侍』

明智光秀織田信長】シリーズでは戦国時代に足軽隊として女性7人がメンバーとなっています。

それで、同じ時代を描いた黒澤明監督の「7人の侍」をご紹介したくなりました。

 

1954年日本映画

出演:志村喬、三船敏朗ほか

アカデミー賞を受賞した、現代でも人気の黒澤映画です。

 

内 容

戦国時代末期、戦いに敗れ野盗となった野武士たちが村を襲い、村人たちは困っていました。

彼らは村を守るために侍を雇い、野盗をやっつけることを計画します。

そこで野盗討伐にやとわれたのが、浪人であった7人の侍です。

 

この映画の見所は戦場場面であって、ぜったい不利な状況での戦いにあります。 

雇われた7人の男たちのすさまじい戦い。

勝ち目のない戦闘に勝利する。その過程の壮絶さとリアルさ。

黒澤監督の妥協を許さない迫力ある映像は、のちの語り草になりました。

 

野盗との戦いが終わり、村に平和が戻り、そして、田植え唄をうたいながら、畑仕事に戻る村人たち。

生き残ったのは、7人の侍のうちのたった3人。

彼らもまた野盗と同じ敗残兵です。

 

「今度もまた、負け戦だったな」

という、ひとりの侍のセリフが胸に迫ります。

今見ても、まったく見劣りしない迫力ある映像です。

 

7人のプロフェッショナルが弱いものを守るという、この筋書きは、その後、多くの映画で取り上げられました。

 

数々のスターを生み出したハリウッド映画『荒野の7人』は有名ですが、それ以外にも数知れず。

スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』では7人の傭兵であったし。

最近では『マグニフィセント・セブン』(2016年)などがあります。

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