【写真でみる上高地】芥川龍之介も高村光太郎も愛した上高地。ツキノワグマが出て、写真どころじゃないけど、ここは秘境?
秘境と上高地が呼ばれる理由
それはマイカー規制があり、タクシーかシャトルバスでしか行けない場所であることと、4月から11月までしか入山できないからでしょうか。
結構、不便な場所です。
だから、空気は綺麗で水は美味しい、秘境・・・、であるのかも?
ん、でも、年間150万人が訪れる人気の観光地で、秘境とは、少し違うような。
幼いころに両親と旅したことがある上高地。
久しぶりに訪れても、変化の激しい都会に比べ
記憶に残る姿と、それほど違ってはいないような。
ただ、その当時より、人が多いです。
昔はほとんどいませんでした。
さて、上高地へ行くには沢渡駐車場で車を降ります。
(因みに沢渡ってサワンドって読むんだそうです)
関東地方から沢渡まで、おおよそ4時間のドライブ。この時期は渋滞があり、5時間はかかりました。
幼いころ、父の運転で行ったときよりも早く、というのも道路が以前より舗装されています。
ともかく、がんばって沢渡駐車場までドライブしました。
へへ、運転、私じゃないから。
沢渡駐車場から、シャトルバスで入山します。
因みに駐車料金1日600円。数日、おいても、それほど高い訳じゃありません。東京なら、1時間で消える料金です。
シャトルバスは、往復で人数分買ったほうが安上がりで、上高地までほぼ30分。上高地バスターミナルが終点なんですが、途中で降りて、また乗車しても追加料金はかからないって、ちょっと良心的だなんて思います。
マイカー規制の場所にはゲートがあり、警備員が常駐していて、その門を超えた道から、上高地らしいカラマツ林で、その美しさに気持ちアゲアゲ、
「おお」って思わず声が漏れました。
カラマツの大木が左右に高くそびえてます。
木立の間から太陽の光がチラチラと降ってきます。その様子は、まるでガラスの破片が空中できらめくようで、
空気の透明度も高いのでしょう。
空の青さも別格です。
幼いころ家族と来たときと同じ風景、クラシックな佇まいはどこか懐かしささえ覚えます。
上高地帝国ホテルの赤い屋根が周囲に美しく溶け込み、背後の穂高連峰とともに、スイスの風景のような雰囲気が楽しめます。
ホテルは大きめのロッジのような趣きで、樹木の香りがして、
正面玄関すぐ右がフロント、前方には大きな煙突のような換気システムがあり、その下に暖炉のあるロビーが位置しています。
美味しいです。とくにジャムがいい味でした。
ホテルに荷物を預けて、10分ほど歩くと、バルターミナルに到着。
そこからさらに、芥川龍之介が『河童』を書いた、その名も河童橋までは3分です。
でも観光客多い!
だから橋から写せなかったです。どうしても人が入り込んでしまって。
芥川自殺前の心境を語った『河童』ですが、
こんな人混みじゃあ、そんな感情は起きないって。自殺してる場合じゃないって、この陽気な雰囲気では。
では、ちょっと、逆側、遠景で人をボケボケ撮影して見ますと、こうだ!
河童橋からのぞむ穂高連峰の、静謐な写真が嘘くさくみえません?
この日の気温、30度くらい。
幼いころ、梓川の水に足を浸して、その冷たさに驚きましたが、今でも氷水のように冷たく、透明でした。
半袖の服で歩いていると、汗が滲みますが、手を浸した川水は冷たかったです。飲むと美味しそうな水でした。
【ここで、ちと裏技】
ここの公衆トイレは虫がいっぱい、つまり自然がいっぱいです。
途中のザ・パークロッジのトイレを借りたほうがいいです。
河童橋から大正池
私たちは河童橋から大正池までの平坦な散歩コースを歩きました。
晴れているのに遠雷が聞こえるっていう、不思議な状態で、青空の先に灰色の濃い雲がかかり、そこでゴロゴロとなっています。
不気味でした。
「山の天気は変わりやすい」という父の声が聞こえたような気がします。
「クマが出るって」
途中のホテルに、クマ情報の張り紙があって、でもって、河童橋周辺は人が多いんですが、大正池に向かう1時間くらいの道筋はほとんど人がいない。
「クマが出たらどうする」
「逃げる!」と家人。
「あ、あの、私、足が遅いんであります」
「頑張れ!」
で、道すじですが、ほんとクマが出そうな雰囲気です。
「あ、あの、かなり後悔が・・・」
「ホテルに確かチリンチリンとなるベルがあってクマ避けって書いてあったぞ」
「ああ、あのベル、鳴らしてみた」
「持って来たか!」
「おいてきた」
「この役立たず」
「お互いさまじゃ」
因みに、ツキノワグマは夜行性で昼間は岩の割れ目や洞窟で休み、夜間に活動するそうですが、果実を求めて昼間にも出ることがあると。
人間を襲うこともあるので注意が必要です。
その上、昼間にクマがいたという情報が多数で、
上空では雷がなっていて、ちょうど半分くらい歩いたころでしょうか。
ガラガラ、ド、キャアアア〜〜〜ン!
すごく大きな音がしました。
雨、降っていません。
青空が見えてます。
「クマ! 雷! なんで、こんな冒険せにゃならん」
「良いか、でかい声で話せ! 声が小さい」
「なんでよ」
「鈴かわりだ。大きい声が聞こえれば、クマも危険を察知するはず」
「危険はクマ頼りかい」
「鈴がないから仕方ないだろう」
ガラガラ、ド、キャアアア〜〜〜ン!
「ぎょえー、また、雷」
「大正池まで、あとどんだけ」
「あと、2キロ」
「さっきの看板もそう書いてあった」
「声が小さい! 大声ではなせ!」
「は!」
雷はなるわ、クマ出没だわ、もう涙声で大声だすわで、喉が痛くなって、恐ろしい冒険のはてに、やっと大正池に到着しました。
ここから、シャトルバスに救援されて、ホテルに戻りました。
クラシックなホテルで創業は昭和8年。
いや、古すぎて、ここエアコンがないんです。
昔は夜は冷えていらなかったそうですが、この日は暑かった。
扇風機があるんですが、それでも暑くて、
「夜は窓を開けて寝ます」と言うと、スタッフに止められました。
「夜、窓を開けると虫が入ってくるんです」
「網戸は?」
「役に立ちません」
ひょえ〜〜!って心声が聞こえたのか。
「すみません」ってスタッフの方が申し訳なさそうでした。
朝、目覚めると窓の向こうに広がる素晴らしい世界。
山が朝靄でかすみ・・・
幽玄な世界というのは、こういうのを言うのでしょうか。
この美しさは別格であって、虫もクマも雷も、すべて許した。
ただただ素晴らしい!!
しかし、その時間は短く、あっという間に青空になりました。
因みに、ホテルのお食事、美味しかったです。
夕食、ディナーの時間、スタッフ全員がレストラン入り口で待ちかまえていて、思わず仰け反りましたが、朝食はそのセレモニーがなくて助かりました。
上高地は標高1500m
詩人高村光太郎が智恵子との結婚を決めた場所としても有名で、多くの文豪が愛した土地でもあります。
大人になって、1度は訪れたい場所でありました。