【毒親と結婚と離婚8】離婚するだけなら簡単。離婚が修羅場になるのは別の問題と映画『三銃士」
《オババ》私の姑、人類最強のディズニーオタク。妹の夫とは同級生
《叔母・勝江(仮名)》オババの妹、ヒステリー性障害を患う。離婚を条件に自宅の譲渡書をもらうが離婚は拒否している
《叔母の夫・あの男》叔母とは10年来の別居中。米国に本拠地を置く会社CEOだが破産、日本で病気療養中
離婚が簡単って、ほんと?
離婚って、実際はとっても簡単なんであって
離婚届を形式通りに記入して役所に提出する、たった、それだけで終わり。
では、なぜ、世の中で離婚は深刻だとか、結婚より大きなエネルギーがいると言われるのでしょうか?
それも、突き詰めれば単純な理由です。
結婚は幸福を追求することであり、
離婚は不幸を認めることですから。
当然、ほんわかとした幸福より、不幸には感情エネルギーを多く使うってことでしょう。
そして、離婚が複雑な問題になるのは究極的に次の3つに集約されます。
財産分割問題、親権問題、一方が望まない。
この問題を解消でき、尚且つ、双方に感情的なもつれがなければ、単なるお役所仕事です。人間関係を複雑にするのは、色欲、強欲など欲がからむ感情問題です。
ともかく叔母の選択肢は2つしかなく・・・
夫に執着してホームレスになるか、離婚して自宅を取るか。
単純な選択であって、理性的に考えれば答えは出たも同然です。
それでも、叔母はダダをこねちゃいます。
オババは姉として、首を突っ込んだんです。
よりにもよって、私も巻き込んでくれたわけで。
叔母を放って縁を切る。そうすれば簡単だったでしょう。
しかし、その結果は怖い。
叔母もただでは起きない性格です。
結構、周囲をうんざりさせるわけで、叔母が意思を貫いた場合、将来的に、困って金銭を要求してくる可能性は高いんであります。きっと大暴れです。
オババはその危険を未然に防いだ。
それも嘘で固め、泥棒して、叔母の承諾なく離婚届を提出しちゃったわけです。現実逃避したい私です・・・
あなたなら、どういう選択をしますか?
【1】 オババのように良識を脇において最適と思われる選択をする
【2】 面倒な関係を断ち切って、完璧に姉妹の縁を切る
【3】 泥沼に落ちていく妹と一緒に泥のなかで蠢き、不幸をなげく
不思議なことに、私がこれまで見てきた多くの人は、3番を選ぶのです。
次の選択肢が2番で、1番はない。
なぜなら、1番目は全てを引き受ける胆力が必要で、
3番を選ぶのは一番考えなくていいからです。良心も痛みません。
離婚後にすること
離婚後の手続きも結構煩雑なものがあります。
しかし、叔母の場合、離婚さえすれば、あとは簡単でした。苗字も変更せず住所も変わらないからです。
離婚って面白いと書けば不謹慎ですが、苗字を変更しなくてもいいんです。だから、叔母、旧姓に戻す必要がありません。
住所も移動しませんから、住民票もそのままです。
叔父が米国に生活拠点を置いており、10年以上、別居状態で世帯主は叔母でした。ですから、その問題もクリア。
また、叔母は収入がありませんから、住民税などの税金も安く、ただ同然です。
つまり、驚いたことに、名前を変えず住むところも一緒で、離婚しても生活は変わらない場合、書類的には他にすることもないんです。
叔母の例は特殊です。
オババが勝手に叔父に頼んで離婚届を出しても、実質、叔母は知るよしもなく生活できているのです。
叔父からは、司法書士に委任状書き、離婚手続きについて、すべて手配したと連絡がきました。
アメリッシュ、なんか肩透かしな気分で、オババに聞きました。
「じゃあ、叔母さん。離婚したこと気づかないですか」
「そうなるな」
オババは、片方の唇をあげ、皮肉な表情をつくりました。
「叔母さんに教えるんですか」
「教えるとどうなるかい?」
少し考えてみた。てか、考える前に結論、でているだろう。
「恐ろしいことであります」
「これは、もう墓場まで持って行くしかない秘密だな」
「バレませんか」
「あれは、年をとったというより、若いころから、そういうことは天文学的に疎い。まず、バレまい」
オババのほうは墓場まで短いが、私はまだ時間があるぞ。
そんな会話があった数日後。オババから連絡がきました。
「勝江の家に行くから、ご一緒にいきませんか」
いやもう猫なで声の電話です。
怖いです。
私、2歩ほど、電話から後ろに下がりました。
「そのような鬼門の場所へ行けるほど、わたくし、度量はございません・・」
「しかし、どうしても行ってもらわねばならん」
あかん、すでに猫なで声から武士になってる。
「な、なにするんですか」
「こっそりと、例の土地の譲渡書を戻す」
「叔母さん。まだ気づいてないんですよね。すり替えを」
「あれは、昔から見たくない事実は見ないという、良い性格をしている。だから、見てない」
「じゃあ、譲渡書は」
「あの男の司法書士から連絡があり、速攻で手続きをしたとな。でな、書類が速達で今届いた。あとは、こっそり勝江のあの古びたタンスに入れとけば問題は終わりだ」
冷や汗ものですが、やるしかない。
「ボス、了解です」
「おお、あと一押しで、贈与税問題は解決じゃ」
「は!」
「いま少しぞ」
「は!」
「それが終われば、ディズニーが待っている」
「いやいやいや・・、それは別に、あの」
「行くぞ」
というわけで、なんだかんだと、今は叔母の家です。
私、横目でチラチラと、例の引き出しがギシギシなる箪笥を見てます。
「あの、タンス、いつ買った」と、オババ。
「なにを今更、いいですか、私はぜったい離婚なんて!」
「その問題はまたで、それよりも土地の権利書が手に入った」
「権利書?」
おっ? オババ、どう説明するつもり。
「そうです」
「どうやって」
「前にも話したろう、先生じゃ。アメ、先生の名は?」
知らんがな。
「え〜〜と、司法書士の先生ですか」
「そう、その司法書士に頼んでおいたら、あんじょうやってくれてのう」
叔母の顔に笑顔が浮かびました。
そ、それで納得したんかい。
本当に、こういう書類関連が苦手なようです。
「今日は書類を持ってきた」
それでいいんか?
薄氷を踏む思いで叔母の顔を見ると、ほっとした表情が浮かんでます。
胸がチクって痛みました。
「でな、前回。あの男が送ってきた書類、それはもう必要ないから、この書類と差し換えよう」とオババが言いました。
そういうわけで、叔母、よっこらしょって椅子から立ち上がり、ぎしぎし言わせながら、引き出しを開けました。
そして、大事そうに茶封筒を持ってきます。
まずいっ!
叔母、茶封筒から中身を出そうとしています。
慌てました。中身は、私がすり替えた冊子『健康』です。
「ゴキブリだ!」
オババ、いきなり大声で叫びました。
きゃーって、全員が同時に叫んで、叔母は茶封筒をテーブルに落としました。
「あそこだ、キッチンの右の左」
いません、ゴキブリいません!
てか、右と左って、冷静に考えてどっちよ。
しかし、ゴキちゃん来襲に、冷静に考える余裕がある者など、ない!
「叔母さん。ゴキブリ用のなんか!」
って、私も大声だしました。
もう、こうなったら声が大きいものが勝ちです。
「あ、あ、そう。なんか、なんかね」と叔母。
なんかで、通じたんかい。
さすが、人類の敵、ゴキブリ。なんかで全て通じる!
叔母、キッチンの下の引き出しから、そのなんかを取り出しました。
「どこどこ、ゴキブリ」
「いや、最近、目が悪くなって見間違いしたようだ」ってオババ。
テーブルの上を見ると、茶封筒が乗っています。
そして、私の椅子には、別の茶封筒が。
「ああ、そうそう、書類はもらっておきますからね」ってオババ、テーブルからとると、椅子の上の茶封筒を渡しました。
「それから、この前借りた、冊子、返しておきますよ」
すべてをすり替えていたぁ〜〜、そして、冊子を叔母に返したぁ〜〜。
オババぁ〜〜!!
これが私の姑です。
もう、こいつだけは絶対に敵にまわしたくねぇ!
映画『三銃士』に出てくる女スパイ、妖艶なミレディー・ド・ウィンターかもしれない、オババという女の中身は。
いや、外見は違うから。ここ、誤解のないように。
四捨五入すれば80歳だから。
映画『三銃士』
何度も映画化された痛快アクション映画です。
ルイ13世時代に活躍した剣士の物語で、マリーアントワネットの義父にあたるルイ13世の時代を描いたアレクサンドル・デュマ原作の映画。
2011年に日本で公開されました。
『三銃士』で、リシュリュー卿の女スパイ、美貌のミレディー・ド・ウィンター役を演じたのは、ミラ・ジョヴォヴィッチです。
この妖婦、魅力的なんであります。
神など、全く信じちゃいないのに、牢屋にとらわれると、その美貌を利用しながら、信仰深い牢番を、神を信じる敬虔な乙女を演じて、あっという間に籠絡、脱獄しちゃう痛快な女です。
敵にまわしちゃ、まずい女ナンバー1。
オババです!