【婚活 その2】ディズニー・ミッキー列車から婚活へのすり替え大作戦
はじめて、このブログ読む方のための解説。ずっと、読んでいますという素晴らしい方々へ、とりあえず、緑字部分はスっとばして、その後から、お読みください。
《オババ》姑、究極のディズニーオタク。今、九州で走るミッキー新幹線にどうしても乗車しようと企み計略を考えている。
《叔母》ひとり娘をこよなく愛する優しすぎる叔母、オババとは正反対の性格でおっとりしたオババの妹。ひとり娘の婚活に悩んでいる。
《これまでの話》オババはアメリッシュ 家族を巻き込んで九州旅行を計画中であり、ミッキー新幹線のために夏休みを潰したくない私と、さまざまな攻防戦続行中。詳しくは下記のブログで。
叔母には、本当に目に入れてるんじゃないかってほど、溺愛する娘がおります。
まだ、結婚していません。それに関していうなら、40歳まで残すところ1年という年末カウントダウンの39歳です。義理イトコ優ちゃん(仮名)、素直で可愛い子です。
はじめて会ったときの優ちゃんは、まだ20代で人懐っこくて、それはいい子でした。
童話の世界からでてきたように可憐で、妖精のようで、そんな彼女の前で、私、かなり焦りました。このイトコと比較されては負け戦しかないって。
容姿、年齢、性格、三拍子ふくめて負けてるって、そうはない経験じゃないですか。
はじめて会ったのは結婚まえ、夫の実家に招待されたときだったと思います。叔母親子もいて、叔母とオババは夕食の準備をしていました。
「ジュース、飲みたい」って、彼女、舌足らずな可愛い声で言ったんです。
「冷蔵庫から自分で取りなさい」
「はーーい」
優ちゃんは、かわいい返事をしてからジュースを取り出していました。20代にしてはあどけない様子で、10代と言っても通る、そんな小柄で妖精のような雰囲気です。
しばらくして、彼女、周囲を見渡し、暇を持て余していた私と視線が合ったのです。
少し緊張気味だった私は、とびきりの笑顔を見せました。将来夫となる人の親族ですから、そりゃあもう、頑張るしかないっていう場面で、ここで破談にしたら後がないぞと、まあ、それなりに必死だったわけです。
軒下にさがった風鈴が夏風にゆれて、ちりーーんと鳴ったのを合図に、
「アメリッシュさぁーーん」
幼い声で彼女が呼びかけてきました。もう少女満開というか可憐さ100パーセントで、私、かなりテンション下がりました。
「取れないの」
「え?」
「ほら」
優ちゃんは、無邪気に薬指をみせます。
指輪がはまっています。彼氏にもらった指輪? ずいぶんとゴツいけど。それ、指輪ですよね。
「取れなくなっちゃたの」
指輪が取れないって、どういう意味だろう?
で、次の瞬間、私、気づいたんです。薬指にはまっているのが指輪じゃないってことに。
プルトップ!
あの缶ジュースを開けたあとに残るプルトップ。普通は缶の中心で折れ曲がっているはずで、プルトップの居場所って、それ以外にないはずが、
それが白くふくよかな指に深々とはまり込んでいる。
なぜプルトップが指に?
ええ、私だって子どものころ遊びましたよ。プルトップ、指にはめて、ほら!って、ちょっと指輪みたく面白いから。でも、それ小学生の低学年ですから。少なくとも小学校卒業して指にプルトップはめるなんてしたことないですから。
自分の目を疑いましたね。
ふわふわした白いワンピースを着た可憐な子が、指にプルトップ。
「な、なんで」と思わず地声がでました。
家族はなにもいいません。なんだか、みなで知らん顔しているような、白々しい沈黙が周囲を支配しています。
私? 私がプルトップのレスキュー隊隊員?
はじめての実家訪問、ここはいい所をみせる場面かもしれない。
たとえ、プルトップ救助隊だったとしても。
私が、頑張るしかない状況だって、余裕をかましてプルトップを外してみせる場面だって。プルトップにかけちゃ、右にでる者なしってくらい、いいところを見せよう。
そう決意しましたね。
まあ、プルトップですし、普通は入ったんだから、抜くのも簡単だと最初は軽く考えていたわけです。
しかし、外せなかったんです。
軽く引いたくらいじゃ取れない。なんでここまで深く突きさした。あんたは何を考えとる。なんて感情をヒタ隠して、ひたすら、そのプルトップと格闘しましたよ。
だって、婚約者の実家に来た嫁候補なわけですから。この試練さえ乗り越えれば、最高の花嫁だと、家族の評価もうなぎのぼり、なんて邪な考えもチラっと脳裏をかすめていたわけで、
よっしゃ、頑張るしかない! ここが頑張りどころだ。
どんな頑固なプルトップだって、私の思いを跳ね返す勇気はないだろう。若かった私、若さゆえの頑張り、あの時の私、本当にキスしたいくらい愛おしい。
そして、プルトップ!
左右に動かしてみたり、逆に押し込んだり、引いたり、ついに強引に引っ張ったが、しかし、全く薬指から外れない。もう、ここしか私の居場所はないのってなぐらい、プルトップ、薬指を死守している。
「イッターーい」
かなり強引に引いたら、彼女、半泣きです。そのときの全員の視線が私には痛かった。
いや、いや、違うから、いじめてないから。
(結局、その日はなんとか、オババが食用油を薬指につけて外しましたが)
義理イトコ、頭が悪いわけじゃないんです。ちゃんとした女子大も卒業しています。
ただ、なんていうか。生活感が乏しいというか。なにもできないというか。とんでもない不思議ちゃんなんであります。
ほんと素直で叔母の言いなりで、言う通りにお勉強して、一貫校からそのまま大学ってコースを、なんの迷いもなく生きてきたわけで。
私みたく、18歳で、なんのために生きているかなんて、18歳には重すぎる課題に取り組む気配もなかったようで。太宰治に傾倒しなかったようで、思春期の懊悩に対して、にっこり笑って通り過ぎた、てか、未だに通り過ぎてないような
そんな素直な子なんであります。
働いたこともあります。これまで何社か会社は首に、いえ、依願退職しています。
その理由を聞いて、私、ひっくり返りましたもんね。
最初に入社した会社で、上司に鉛筆を削ってと言われ、1ダース12本の鉛筆を1センチになるまで、全部削ったらしいです。
悪意はないです。素直です。12本、なぜ全て削り終えたって聞いたら、ニコっとして。
「だって、どこまでも先に削れるから、削れるとこまでやってみたの」
なんかの求道者か!
とても愛らしいから、お見合いでも、最初は男ども大喜びです。それで2回目も、有頂天で、またデートとか申し込んでくるんですが、3回目ほどから怪しくなって、それから逃げ腰になって、最終的には
「僕には、あなたを背負う力がないです」とかなんとか、そんな断りが何度も来て、
10回目の見合い相手なんてジョークでした。
「あなたほど素敵な女性はいない、僕にはもったいなさすぎる」
10回断られているから、もう真実味のカケラもないですから。
わかるよ、男たち。いくら可愛くてもな。生活感ゼロだもんな。ひとりで部屋に残して仕事に行ける勇気なんて、そりゃ出ないだろう。
で、今、まさにとうに花の枯れた39歳になっております。
叔母、婚活に必死です。私が死んだら、この子はどうやって生きていけるかって、もうサバイバルな状況なんです。
オババのミッキー新幹線なんて、優ちゃんの婚活に比べたら、ちっちゃな話であり、生死を決する問題は婚活なんです。
もし優ちゃんを誰かに押し付けることが、いや、結婚してくれるツワモノを見つけることができれば、親族内で英雄となること請け合いの、それは大変なミッションであるわけです。
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しかし、どういう育ち方をすれば、このように12歳か13歳で時が止まったままでいられるのだろうか。
オババによれば、それは簡単のことだと突き放します。
「ともかく、優ちゃんが幼いころからね。妹はそりゃ大切に大切に、箸も持たせないくらい大切に育てましたからね。文字通り持たせなかったんです。もし間違って、箸やスプーンで目でもさしたら大変でしょ。だから小さいときは、自分で食事をしたことがないんです。一時が万事で、私が口をすっぱくして言っても、妹は心配して、どこまでも優ちゃんの後ろを追っかけてね。小学校じゃあ、教室の後ろで見学してましたよ。アレルギーがあって、小児喘息で、医者から診断書をもらってまで。お食事のときまで手をだそうとして、先生に、それはお母さんと言われてました」
まあ、そんな育ち方だったようで。
子育てで最も大切なことといえば、子どもを自立できる大人にすることでしょう。それが親としての勤めなら、叔母はそこのところ、見事に失敗しました。
そして、その結果が、いまここにある危機なんであります。
to be continued