薔薇咲く庭に憧れました
薔薇! なんという神々しくも、そして手の届かない孤高の存在なのだろうか。さまざまな薔薇が彩る庭への憧れ。しかし、そのハードルは、すこぶる高いのです。私のような怠け者が手を出す種類のシロモノではない。
そう思っていたのですが、一昨年(2017年)9月、奇跡の出会いがありました。
園芸店で片隅に打ち捨てられた198円の鉢を発見したのです。半分枯れかけた枝。花も散り、無残な姿を晒すその姿は、さすが198円!の値に恥じぬ佇まい。
モッコウバラと書かれた札をみて、バラかぁと鼻腔がチラっと膨らみました。
「おじさん。これ、育てるの難しいですか?」と店の人に声をかけると、無愛想な声で一言。
「簡単だよ。超初心者向け」
失敗しても198円。痛手は少ない。チョコレートを1枚我慢すれば良い値段だ。そうそうに悪友Yに連絡した。彼女、園芸に関しては師匠であります。数十年前の学生時代、生物の試験を落としたYに徹夜で特訓した恩を、今、まさに返してもらう時がきている。
「ペットショップで育ちすぎて安くなった子犬みたいな、そんな憐れなモッコウバラの鉢を見つけた」
「ほう」
「198円だ」
「でかした! と手放しで喜ぶべきところなのか」
「買おうかどうか迷っています」
「買うかどうかの前に、迷う値段か」
「バラだよ、初心者が手を出して良いものか」
「あれをバラというと、バラ愛好家は斜め上から、チラっと視線を投げかけます」
「意味不明ですが」
「それほど楽なバラだ」
「買った!」
「ちょ、ちょっと、ま、待ったぁーーー! この時期よ、もう枯れているんじゃないかぁ・・・」という最後のラインを読む前に、おじさんに198円を差し出していた。
その後のモッコウバラ。植えてから2年。昨年は花が咲きませんでしたが、今年、枝葉は、こんなに立派になりました。ほんと手間いらずの初心者向けだと思います。今年こそ、咲いてくれるのが楽しみです。
ただ、こんな立派というには、まだ早いかも。可憐な花がつくのを見ていません。いつか、満開の花が開いたときに、また、お知らせできたら、なんて思っております。